す》ゑて煙管《きせる》を噛《か》んではむつゝりとして居《ゐ》るのを見《み》ると、何《なん》となく憚《はゞか》つて成《な》るべく其《そ》の視線《しせん》を避《さ》けるやうに遠《とほ》ざかつて居《ゐ》ることを餘儀《よぎ》なくされるのであつた。
勘次《かんじ》とお品《しな》は相思《さうし》の間柄《あひだがら》であつた。勘次《かんじ》が東隣《ひがしどなり》の主人《しゆじん》に傭《やと》はれたのは十七の冬《ふゆ》で十九の暮《くれ》にお品《しな》の婿《むこ》に成《な》つてからも依然《いぜん》として主人《しゆじん》の許《もと》に勤《つと》めて居《ゐ》た。彼《かれ》は其《その》當時《たうじ》お品《しな》の家《うち》へは隣《となり》づかりといふので能《よ》く出入《でい》つた。一《ひと》つには形《かたち》づくつて來《き》たお品《しな》の姿《すがた》を見《み》たい所爲《せゐ》でもあつた。彼《かれ》は秋《あき》の大豆打《だいづうち》といふ日《ひ》の晩《ばん》などには、唐箕《たうみ》へ掛《か》けたり俵《たはら》に作《つく》つたりする間《あひだ》に二|升《しよう》や三|升《じよう》の大豆《だいづ》は竊《ひそか》
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