其《そ》の僅少《きんせう》な前借《ぜんしやく》の金《かね》を踏《ふ》み倒《たふ》す程《ほど》の料簡《れうけん》が起《おこ》されなかつたのである。其《そ》の内《うち》に張元《ちやうもと》から葉書《はがき》が來《き》た。彼《かれ》は只管《ひたすら》恐怖《きようふ》した。然《しか》し二人《ふたり》の子《こ》を見棄《みす》てゝ行《ゆ》くことが出來《でき》ないので、どうしていゝか判斷《はんだん》もつかなかつた。さうする内《うち》にお品《しな》の七日も過《す》ぎた。彼《かれ》は煩悶《はんもん》した。唯《たゞ》一つ卯平《うへい》が野田《のだ》へ行《ゆ》くのを暫《しばら》く猶豫《いうよ》して貰《もら》つて自分《じぶん》は其《そ》の間《あひだ》に少《すこ》しでも小遣錢《こづかひせん》を稼《かせ》いで來《き》たいと思《おも》つた。然《しか》しそれも直接《ちよくせつ》には云《い》ひ出《だ》せないので、例《れい》の桑畑《くはばたけ》一|枚《まい》隔《へだ》てた南《みなみ》へ頼《たの》んだ。數日來《すうじつらい》彼《かれ》は卯平《うへい》が其《そ》の大《おほ》きな體躯《からだ》を火鉢《ひばち》の側《そば》に据《
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