な》らぬと思《おも》ふと自分《じぶん》の身上《しんしやう》から一|俵《ぺう》の米《こめ》を減《げん》じては到底《たうてい》立《た》ち行《ゆ》けぬことを深《ふか》く思案《しあん》して彼《かれ》は眠《ねむ》らないこともあつた。然《しか》し他《た》に方法《はうはふ》もないので彼《かれ》は地主《ぢぬし》へ哀訴《あいそ》して小作米《こさくまい》の半分《はんぶん》を次《つぎ》の秋《あき》まで貸《か》して貰《もら》つた。地主《ぢぬし》は東隣《ひがしどなり》の舊主人《きうしゆじん》であつたのでそれも承諾《しようだく》された。彼《かれ》は更《さら》に其《そ》の僅《わづか》な米《こめ》の一|部《ぶ》を割《さ》いて錢《ぜに》に換《か》へねばならぬ程《ほど》懷《ふところ》が窮《きう》して居《ゐ》たのである。
勘次《かんじ》はそれから復《ま》た利根川《とねがは》の工事《こうじ》へ行《ゆ》かねばならないと思《おも》つて居《ゐ》た。それは彼《かれ》が僅《わづか》の間《あひだ》に見《み》た放浪者《はうらうしや》の怖《おそ》ろしさを思《おも》つて、假令《たとひ》どうしても其《その》統領《とうりやう》を欺《あざむ》いて
前へ
次へ
全956ページ中127ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング