年《ねん》餘《あまり》も保《も》たなかつた腹《はら》は與吉《よきち》が止《とま》つてから癖《くせ》が附《つ》いたものと見《み》えて又《また》姙娠《にんしん》したのである。お品《しな》も勘次《かんじ》もそれには當惑《たうわく》した。おつぎを奉公《ほうこう》に出《だ》して畢《しま》へば、二人《ふたり》の子《こ》を抱《だ》いてお品《しな》は從來《これまで》のやうに働《はたら》くことが出來《でき》ない、僅《わづか》な稼《かせぎ》でもそれが停止《ていし》されることは彼等《かれら》の生活《せいくわつ》の爲《ため》には非常《ひじやう》な打撃《だげき》でなければならぬ。其《そ》の内《うち》に稻《いね》を刈《か》つたり、籾《もみ》を干《ほ》したり忙《いそが》しい收穫《しうくわく》の季節《きせつ》が來《き》て、冴《さ》えた空《そら》の下《した》に夫婦《ふうふ》は毎日《まいにち》埃《ほこり》を浴《あ》びて居《ゐ》た。有繋《さすが》に罪《つみ》なやうな心持《こゝろもち》もするので夫婦《ふうふ》は只《たゞ》困《こま》つて其《そ》の日《ひ》を過《すご》して居《ゐ》た。それも夜《よる》に成《な》つて疲《つか》れた身
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