こは》れで幾《いく》らか白《しろ》くなつた水《みづ》を棄《す》てゝ天秤《てんびん》は輕《かる》くなるのである。お品《しな》は何時《いつ》でも日《ひ》のあるうちに夜《よ》なべに繩《なは》に綯《な》ふ藁《わら》へ水《みず》を掛《か》けて置《お》いたり、落葉《おちば》を攫《さら》つて見《み》たりそこらこゝらと手《て》を動《うご》かすことを止《や》めなかつた。天性《ね》が丈夫《ぢやうぶ》なのでお品《しな》は仕事《しごと》を苦《くる》しいと思《おも》つたことはなかつた。
それが此《この》日《ひ》は自分《じぶん》でも酷《ひど》く厭《いや》であつたが、冬至《とうじ》が來《く》るから蒟蒻《こんにやく》の仕入《しいれ》をしなくちや成《な》らないといつて無理《むり》に出《で》たのであつた。冬至《とうじ》といふと俄商人《にはかあきうど》がぞく/\と出來《でき》るので急《いそ》いで一|遍《ぺん》歩《ある》かないと、其《その》俄商人《にはかあきうど》に先《せん》を越《こ》されて畢《しま》ふのでお品《しな》はどうしても凝然《ぢつ》としては居《ゐ》られなかつた。蒟蒻《こんにやく》は村《むら》には無《な》いので、仕
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