わ/″\と鳴《な》る。世間《せけん》が俄《にはか》に心《こゝろ》ぼそくなつた。
お品《しな》は復《ま》た天秤《てんびん》を卸《おろ》した。お品《しな》は竹《たけ》の短《みじか》い天秤《てんびん》の先《さき》へ木《き》の枝《えだ》で拵《こしら》へた小《ちひ》さな鍵《かぎ》の手《て》をぶらさげてそれで手桶《てをけ》の柄《え》を引《ひ》つ懸《か》けて居《ゐ》た。お品《しな》は百姓《ひやくしやう》の隙間《すきま》には村《むら》から豆腐《とうふ》を仕入《しい》れて出《で》ては二三ヶ|村《そん》を歩《ある》いて來《く》るのが例《れい》である。手桶《てをけ》で持《も》ち出《だ》すだけのことだから資本《もとで》も要《いら》ない代《かはり》には儲《まうけ》も薄《うす》いのであるが、それでも百姓《ひやくしやう》ばかりして居《ゐ》るよりも日毎《ひごと》に目《め》に見《み》えた小遣錢《こづかひせん》が取《と》れるのでもう暫《しばら》くさうして居《ゐ》た。手桶《てをけ》一提《ひとさげ》の豆腐《とうふ》ではいつもの處《ところ》をぐるりと廻《まは》れば屹度《きつと》なくなつた。還《かへ》りには豆腐《とうふ》の壞《
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