猶ほ更らさう云ひたいのである。
[#地から1字上げ](明治四十五年五月)
[#改丁]
一
烈《はげ》しい西風《にしかぜ》が目《め》に見《み》えぬ大《おほ》きな塊《かたまり》をごうつと打《う》ちつけては又《また》ごうつと打《う》ちつけて皆《みな》痩《やせ》こけた落葉木《らくえふぼく》の林《はやし》を一|日《にち》苛《いぢ》め通《とほ》した。木《き》の枝《えだ》は時々《とき/″\》ひう/\と悲痛《ひつう》の響《ひゞき》を立《た》てゝ泣《な》いた。短《みじか》い冬《ふゆ》の日《ひ》はもう落《お》ちかけて黄色《きいろ》な光《ひかり》を放射《はうしや》しつゝ目叩《またゝ》いた。さうして西風《にしかぜ》はどうかするとぱつたり止《や》んで終《しま》つたかと思《おも》ふ程《ほど》靜《しづ》かになつた。泥《どろ》を拗切《ちぎ》つて投《な》げたやうな雲《くも》が不規則《ふきそく》に林《はやし》の上《うへ》に凝然《ぢつ》とひつゝいて居《ゐ》て空《そら》はまだ騷《さわ》がしいことを示《しめ》して居《ゐ》る。それで時々《とき/″\》は思《おも》ひ出《だ》したやうに木《き》の枝《えだ》がざ
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