ん間合《まにやあ》ねえこたありあんすめえね」
「さうだよ、老人《としより》なんていふものは少《すこ》しの加減《かげん》なんだから、まあ心配《しんぱい》させないやうにした方《はう》が好《い》いよ、さういつちや何《なん》だが後《あと》幾《いく》らも生《い》きるんぢやなしねえ」
「へえさうでがすよ、昨日等《きのふら》ツからちつと柔《やつけ》え言辭《ことば》掛《か》けつとうるしがつて居《ゐ》んですから、それからわし野郎《やらう》げ貰《もら》つて來《き》た火傷《やけど》の藥《くすり》も貼《は》つてやつたんでさ、藥《くすり》足《た》んなく成《な》つちやつたから醫者樣《いしやさま》さ行《い》つて來《く》べと思《おも》つたつけが、今日《けふ》は午後《ひるすぎ》で居《ゐ》めえと思《おも》ふから明日《あした》にすべと思《おも》つて止《や》めたのせ、明日《あした》行《い》つたら水飴《みづあめ》でも買《か》つて來《き》てやれなんておつうも云《い》ふもんでがすからね」
「火傷《やけど》したなんて聞《き》いたつけがそれでも家《うち》へ連《つ》れて來《き》てかね」
「へえ」勘次《かんじ》は其《そ》の佛曉《あけがた》のことをどうしてか内儀《かみ》さんがまだ知《し》らぬらしいのでほつと息《いき》をついたが又《また》自分《じぶん》から恥《は》ぢて、簡單《かんたん》に瞹昧《あいまい》に斯《か》ういつた。
「お内儀《かみ》さん、こうちつとでもよくねえ錢《ぜに》へえつちや末始終《すゑしじう》はどうしてもえゝこたありあんすめえね」勘次《かんじ》は更《さら》にまた酷《ひど》く懸念《けねん》らしい容子《ようす》をして突然《とつぜん》に聞《き》いた。
「さうさねえ」内儀《かみ》さんは勘次《かんじ》の心持《こゝろもち》が明瞭《はつきり》とは分《わか》らないので氣《き》の乘《の》らぬやうにいつた。
「そんだがお内儀《かみ》さんさうえ錢《ぜに》は自分《じぶん》のげ役《やく》に立《た》てせえしなけりやどうしても違《ちげ》えあんすべえね」勘次《かんじ》は内儀《かみ》さんに分《わか》つても分《わか》らなくても、そんなことを考《かんが》へる餘裕《よゆう》がなかつた。彼《かれ》は只《たゞ》自分《じぶん》の心配《しんぱい》だけを底《そこ》から蓋《ふた》から打《ぶ》ち傾《ま》けて畢《しま》はねば堪《た》へられなかつたのである。
「さう
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