勘次《かんじ》の首《くび》は更《さら》に俛《うなだ》れた。彼《かれ》の目《め》は潤《うる》んだ。
「わしもはあ、そんならなんぼ助《たすか》るかも知《し》れあんせんが、お内儀《かみ》さん處《とこ》ささう云《ゆ》つて來《く》る譯《わけ》にも行《え》がねえで」と勘次《かんじ》は亂《みだ》れた頭髮《かみ》へ手《て》を當《あ》てゝ媚《こ》びるやうな容子《ようす》をしていつた。
「それだがお前《まへ》にやる位《くらゐ》ならどうにか成《な》るから心配《しんぱい》しなくつても好《い》いよ」
「わしも此《こ》れ、罰《ばち》當《あた》つたんでがせう、さう思《おも》ふより外《ほか》有《あ》りあんせんから」勘次《かんじ》は暫《しばら》く間《あひだ》を措《お》いて
「わしも嚊《かゝあ》こと因果《いんぐわ》見《み》せて罪《つみ》作《つく》つたの惡《わ》りいんでがせう」彼《かれ》の聲《こゑ》は沈《しづ》んだ。
「お内儀《かみ》さん、わしどんな形《なり》にか家《うち》も建《た》てなくつちやなんねえから、そん時《とき》や家族《うち》の極《きま》りもつけべと思《おも》つてんですが、お内儀《かみ》さん又《また》わしこと面倒《めんだう》見《み》ておくんなせえ、わし等《ら》野郎《やらう》も其《その》内《うち》はあ大《えか》く成《な》つて來《く》つから學校《がくかう》もあとちつとにして百姓《ひやくしやう》みつしら仕込《しこ》むべと思《おも》つてんでがすがね」
「さうかえ」内儀《かみ》さんは慰《なぐさ》めるやうにいつた。
「お内儀《かみ》さん親不孝《おやふかう》だなんちな、親《おや》が警察《けいさつ》へでも願《ねが》つて出《で》なけりや巡査《じゆんさ》ばかしぢやどうすることも出來《でき》ねえもんでござんせうかね」勘次《かんじ》は先刻《さつき》からの噺《はなし》の内《うち》にも何《なん》だか後《うしろ》から物《もの》に襲《おそ》はれるやうな容子《ようす》が止《や》まなかつたが遂《つひ》に斯《か》ういつた。
「さうさね、巡査《じゆんさ》だつて無闇《むやみ》にどうかするといふこともないんだらうと思《おも》ふやうだがね」内儀《かみ》さんは意外《いぐわい》な面持《おももち》でいつた。
「此《こ》れからはあ、わしも爺樣《ぢいさま》こと面倒《めんだう》見《み》べと思《おも》ふんでがすがね、今《いま》ツからでもお内儀《かみ》さ
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