《ねんれう》を探《さが》すことの困難《こんなん》なことを顧慮《こりよ》する遑《いとま》さへ有《も》たなかつたのである。
 午後《ごゝ》になつて此《こ》の例年《れいねん》にない雪《ゆき》も歇《や》んだ。空《そら》が左《さ》もがつかりしたやうにぼんやりした。おつぎが騷《さわ》いだ心《こゝろ》も靜《しづ》まつて又《また》水《みづ》を汲《く》みに出《で》た時《とき》、釣瓶《つるべ》の底《そこ》は重《おも》く成《な》つて抑《おさ》へた鍵《かぎ》の手《て》から外《はづ》れようとして居《ゐ》た。後《うしろ》の竹《たけ》の林《はやし》はべつたりと俛首《うなだ》れた。冬《ふゆ》のやうにさら/\と潔《いさぎよ》い落《おち》やうはしないで、濕《うるほ》ひを持《も》つた雪《ゆき》は竹《たけ》の梢《こずゑ》をぎつと攫《つか》んで放《はな》すまいとして居《ゐ》る。竹《たけ》は苦《くる》しい呼吸《いき》をするやうに小《ちひ》さな枝《えだ》が一《ひと》つづゝぴらり/\と動《うご》いて其《そ》の壓迫《あつぱく》から遁《のが》れようと力《つと》めつゝある。北《きた》から見《み》れば白《しろ》い柱《はしら》であつた樹木《じゆもく》の幹《みき》も悉皆《みんな》以前《いぜん》の姿《すがた》に成《な》らうとしてずん/\と雪《ゆき》を轉《ころ》がした。庭《には》から先《さき》の桑畑《くはばた》は唯《たゞ》一|杯《ぱい》に白《しろ》い。地上《ちじやう》數寸《すすん》の深《ふか》さに雪《ゆき》は積《つも》つて居《ゐ》た。桑畑《くはばた》の端《はし》の方《はう》に薹《とう》に立《た》つた菜種《なたね》の少《すこ》し黄色《きいろ》く膨《ふく》れた蕾《つぼみ》は聳然《すつくり》と其《その》雪《ゆき》から伸《の》び上《あが》つて居《ゐ》る。其處《そこ》らには枯《か》れた蓬《よもぎ》もぽつり/\と白《しろ》い褥《しとね》に上體《じやうたい》を擡《もた》げた。頬白《ほゝじろ》か何《なに》かゞ菜種《なたね》の花《はな》や枯蓬《かれよもぎ》の陰《かげ》の淺《あさ》い雪《ゆき》に短《みじか》い臑《すね》を立《た》てゝ見《み》たいのか桑《くは》の枝《えだ》をしなやかに蹴《け》つて活溌《くわつぱつ》に飛《と》びおりた。さうして又《また》枝《えだ》に移《うつ》つた。
 後《うしろ》の田圃《たんぼ》では、水《みづ》こけの惡《わる》い田《た》
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