には降《ふ》つてる内《うち》から雪《ゆき》は溶《と》けつゝあつたので、畦畔《くろ》が殊更《ことさら》に白《しろ》い線《せん》を描《ゑが》いて目《め》に立《たつ》た。其處《そこ》にも堀《ほり》の邊《ほとり》の赤《あか》い實《み》の錆《さ》びた野茨《のばら》の枝《えだ》に堅《たて》に成《な》つたり横《よこ》に成《な》つたりして、ずん/\と消《き》え行《ゆ》く雪《ゆき》を悦《よろこ》ぶやうに頬白《ほゝじろ》がちよん/\と渡《わた》つた。夕方《ゆふがた》には田圃《たんぼ》の白《しろ》い線《せん》も途切《とぎ》れ/\に成《な》つた。何處《どこ》の梢《こずゑ》も白《しろ》い物《もの》を止《とゞ》めないで疲《つか》れたやうに濡《ぬれ》て居《ゐ》た。雪《ゆき》は悉《こと/″\》く土《つち》に落《おち》ついて畢《しま》つた。其《その》落《おち》ついた雪《ゆき》を突《つ》き扛《あ》げて何處《どこ》の屋根《やね》でも白《しろ》い大《おほ》きな塊《かたまり》のやうに見《み》えた。枯木《かれき》の間《あひだ》には殊更《ことさら》それが明瞭《はつきり》と目《め》に立《た》つた。黄昏《たそがれ》の煙《けぶり》が蒼《あを》く割《わ》れた空《そら》へ吸《す》はれて靜《しづ》かな日《ひ》は暮《く》れた。
 卯平《うへい》はすや/\と呼吸《こきふ》を恢復《くわいふく》した儘《まゝ》で口《くち》は利《き》かない。ぴしや/\と飛沫《しぶき》の泥《どろ》を蹴《け》りつゝ粟幹《あはがら》の檐《のき》からも雪《ゆき》の解《と》けて滴《したゝ》る勢《いきほ》ひのいゝ雨垂《あまだれ》が止《や》まないで夜《よる》に成《な》つた。其《そ》の夜《よ》南《みなみ》の女房《にようばう》は蒲團《ふとん》を二|枚《まい》肩《かた》に掛《か》けて持《も》つて來《き》た。一《ひと》つには義理《ぎり》が濟《す》まぬといふので卯平《うへい》の容子《ようす》を見《み》に來《き》たのである。其《そ》れは二|度目《どめ》であつた。手《て》ランプもない闇《くら》い小屋《こや》の内《うち》に暫《しばら》く語《かた》つて女房《にようばう》が去《さ》つた後《のち》、與吉《よきち》は卯平《うへい》の裾《すそ》へ潜《もぐ》らせた。おつぎは其《そ》の一|枚《まい》の蒲團《ふとん》を掛《か》けて卯平《うへい》に添《そ》うて身《み》を横《よこ》たへた。勘次《かん
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