汝《わ》りや大《え》けえ姿《なり》して、呉《く》ろうの何《なん》だのつて」と與吉《よきち》を呶鳴《どな》りつけた。與吉《よきち》は悄々《すご/\》と出《で》て行《い》つた。卯平《うへい》は少《すこ》し目《め》を開《ひら》いて與吉《よきち》の後姿《うしろすがた》を見《み》た。涙《なみだ》が止《と》めどもなく出《で》た。彼《かれ》はそれを拭《ぬぐ》はうともしなかつた。

         二七

 其《そ》の夜《よ》温度《をんど》が著《いちじ》るしく下降《かかう》した。季節《きせつ》は彼岸《ひがん》も過《す》ぎて四|月《ぐわつ》に入《はひ》つて居《ゐ》るのであるが、寒《さむ》さは地《ち》に凝《こ》りついたやうに離《はな》れなかつた。夜半《やはん》に卯平《うへい》はのつそりと起《お》きて圍爐裏《ゐろり》に麁朶《そだ》を燻《く》べた。ちろちろと鐵瓶《てつびん》の尻《しり》から燃《も》えのぼる火《ひ》は周圍《しうゐ》の闇《やみ》に包《つゝ》まれながら窶《やつ》れた卯平《うへい》の顏《かほ》にほの明《あか》るい光《ひかり》を添《そ》へた。彼《かれ》は勢《いきほ》ひない焔《ほのほ》の前《まへ》に目《め》を瞑《つぶ》つた儘《まゝ》只《たゞ》沈鬱《ちんうつ》の状態《じやうたい》を保《たも》つた。彼《かれ》は殆《ほと》んど動《うご》かぬやうにして棄《す》てゝ置《お》けばすつと深《ふか》く沈《しづ》んで畢《しま》つたやうに冷《さ》めて行《ゆ》く火《ひ》へぽちり/\と麁朶《そだ》を足《た》して居《ゐ》た。彼《かれ》は暫《しばら》く自失《じしつ》したやうにして居《ゐ》て麁朶《そだ》の火《ひ》が周圍《しうゐ》の闇《やみ》に壓《お》しつけられようとして僅《わづか》に其《そ》の勢《いきほ》ひを保《たも》つた時《とき》彼《かれ》はすつと立《た》ち上《あが》つた。彼《かれ》の糜爛《びらん》した横頬《よこほゝ》はもう火《ひ》の氓《ほろ》びようとして居《ゐ》る薄明《うすあか》りにぼんやりとした。火《ひ》はげつそりと落《お》ちて彼《かれ》の姿《すがた》が消《き》え入《い》らうとした。彼《かれ》は戸《と》を開《あ》けて踉蹌《よろ》けながら出《で》た。寒《さむ》い風《かぜ》が冷《つめ》たい刄《やいば》を浴《あ》びせた。卯平《うへい》は悚然《ぞつ》とした。
 勘次等《かんじら》三|人《にん》は其《そ》の夜《よ》も
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