吉《よきち》は自分《じぶん》の心《こゝろ》に少《すこ》しの隔《へだ》てをも有《いう》して居《を》らぬ卯平《うへい》の前《まへ》に知《し》つてることを矜《ほこ》るやうにいつた。
「汝《われ》こた怒《おこ》んねえのか」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは與吉《よきち》の隱《かく》さぬ言辭《ことば》に少《すこ》し力《りき》んだ勢《いきほ》ひが拔《ぬ》けたやうになつて斯《か》ういつた。
「俺《お》れこた怒《おこ》んねえ、俺《お》ら怒《おこ》つたつ位《くれえ》遁《に》げつちやあから」與吉《よきち》のいふのを聞《き》いて爺《ぢい》さんの憤《いか》りは和《やはら》げられた。卯平《うへい》は蒼《あを》い顏《かほ》をして凝然《ぢつ》と瞑《つぶ》つた目《め》を蹙《しが》めて聞《き》いて居《ゐ》た。圍爐裏《ゐろり》には麁朶《そだ》の一|枝《えだ》も燻《く》べてなかつた。三|人《にん》は暫《しばら》くぽさりとした。
「爺《ぢい》くんねえか」與吉《よきち》は危《あやぶ》むやうにいつた。
「汝《わ》りや何《なに》欲《ほ》しいつちんだ」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは底力《そこぢから》の有《あ》る聲《こゑ》を低《ひく》くしていつた。
「俺《お》ら一錢《ひやく》もねえから」と卯平《うへい》はこそつぱい或《ある》物《もの》が喉《のど》へ支《つか》へたやうにごつくりと唾《つば》を嚥《の》んだ。彼《かれ》の目《め》の皺《しわ》が餘計《よけい》にぎつと緊《しま》つた。
「俺《お》らまあだ、ちつた有《あ》つたんだつけが、煙草入《たぶこれ》と同志《どうし》に燒《や》えつちやつたから」彼《かれ》はぽさりと投《な》げ出《だ》していつた。
「煙草入《たぶこれ》は燒《や》けたつて錢《ぜね》だら灰《へえ》掻掃《かつぱ》けば有《あ》る筈《はず》だ、外《ほか》に盜《と》る奴《や》ざ有《あ》りやすめえし」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんの目《め》は光《ひか》つた。
「なあに分《わか》んねえよ、おつう等《ら》毎日《まいんち》來《き》てゝも其《そ》の噺《はなし》やねえんだから、俺《お》らどうせ癒《なほ》つか何《なん》だか分《わか》りやすめえし、要《え》らねえな」
「なあに、俺《お》れ聞《き》いて見《み》なくつちやなんねえ、出《だ》すも出《だ》さねえも有《あ》るもんか」小柄《こがら》な爺《ぢい》さんは呟《つぶや》いて
「行《え》けはあ、
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