凝集《こご》つて薄《うす》い蒲團《ふとん》にくるまつた。勘次《かんじ》は足《あし》に非常《ひじやう》な冷《つめ》たさを感《かん》じて、うと/\として居《ゐ》た眠《ねむり》から醒《さ》めた。手足《てあし》を伸《のば》せば括《くゝ》りつけた萱《かや》や篠《しの》の葉《は》に觸《ふ》れてかさ/\と鳴《な》る程《ほど》狹《せま》い室内《しつない》を、寒《さむ》さは束《たば》ねた松葉《まつば》の先《さき》でつゝくやうに徹宵《よつぴて》其《その》隙間《すきま》を狙《ねら》つて止《や》まなかつた。勘次《かんじ》は目《め》が冴《さ》えて畢《しま》つた。彼《かれ》は北《きた》に枕《まくら》して居《ゐ》た。後《うしろ》の林《はやし》が性急《せいきふ》に騷《さわ》いでは又《また》靜《しづ》まつてさうしてざわ/\と鳴《な》つた。北風《きたかぜ》が立《た》つたのだ。低《ひく》い粟幹《あはがら》の屋根《やね》から其《その》括《くゝ》りつけた萱《かや》や篠《しの》の葉《は》には冴《さ》えた耳《みゝ》に漸《やつ》と聞《きゝ》とれるやうなさら/\と微《かす》かに何《なに》かを打《う》ちつけるやうな響《ひゞき》が止《や》まない。漸次《だん/\》に其《そ》の響《ひゞき》を消滅《せうめつ》して、隙間《すきま》を求《もと》めて侵入《しんにふ》する寒《さむ》さの度《ど》が加《くは》はつた。何處《どこ》かで凍《こほつ》てた土《つち》へ響《ひゞ》くやうな※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《にはとり》の聲《こゑ》が疳走《かんばし》つて聞《きこ》えると夜《よる》は檐《のき》の隙間《すきま》から明《あか》るくなつた。勘次《かんじ》はおつぎを起《おこ》した。彼《かれ》は夜《よ》が明《あ》ければ蒲團《ふとん》に堅《かた》くなつて居《ゐ》るよりも火《ひ》にあたつた方《はう》が遙《はるか》によかつた。彼《かれ》は明《あ》けるのを待遠《まちどほ》にして居《ゐ》た。おつぎは外《そと》へ出《で》ようとした。外《そと》は意外《いぐわい》に積《つも》り掛《か》けた雪《ゆき》が白《しろ》かつた。更《さら》に積《つも》りつゝある大粒《おほつぶ》な雪《ゆき》が北《きた》から斜《なゝめ》に空間《くうかん》を掻亂《かきみだ》して飛《と》んで居《ゐ》る。おつぎは少時《しばし》立《た》ち悚《すく》んだ。大粒《おほつぶ》な雪《ゆき》を投《な》げ
前へ 次へ
全478ページ中455ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング