掻《か》つ拂《ば》かうとした時《とき》、黒《くろ》く焦《こ》げたやうな或《ある》物《もの》が草鞋《わらぢ》の先《さき》に掛《かゝ》つた。燒《や》けて變色《へんしよく》した銅貨《どうくわ》の少《すこ》し凝《こゞ》つたやうになつたのが足《あし》に觸《ふ》れてぞろりと離《はな》れた。彼《かれ》は周圍《しうゐ》にひよつと目《め》を放《はな》つた。彼《かれ》の目《め》に入《い》るものは此《これ》も一|心《しん》に灰《はひ》の始末《しまつ》をして居《ゐ》るおつぎの外《ほか》にはなかつた。彼《かれ》は銅貨《どうくわ》を竊《そつ》と竹《たけ》の林《はやし》の側《そば》へ持《も》つて行《い》つた。彼《かれ》はぎりつと縛《しば》つた三|尺帶《じやくおび》を解《と》いて、財布《さいふ》を括《くゝ》つた結《むす》び目《め》に齒《は》を掛《か》けて漸《やうや》く其《その》財布《さいふ》を取《と》り出《だ》した。燒《や》けた銅貨《どうくわ》を彼《かれ》は財布《さいふ》へ投《な》げ込《こ》んで復《ま》たぎりつと腰《こし》へ括《くゝ》つた。彼《かれ》はさうして再《ふたゝ》びきよろ/\と周圍《ぐるり》を見《み》た。勘次《かんじ》は幾《いく》つかの小山《こやま》を形《かたち》づくつた灰《はひ》へ藁《わら》や粟幹《あはがら》でしつかと蓋《ふた》をした。彼《かれ》はそれを田《た》や畑《はた》へ持《も》ち出《だ》さうとしたので、雨《あめ》に打《う》たせぬ工夫《くふう》である。其《そ》の藁《わら》や粟幹《あはがら》は近所《きんじよ》の手《て》から與《あた》へられた。彼《かれ》は住居《すまゐ》を失《うしな》つた第《だい》二|日目《かめ》に始《はじ》めて近隣《きんりん》の交誼《かうぎ》を知《し》つた。南《みなみ》の女房《にようばう》は古《ふる》い藥鑵《やくわん》と茶碗《ちやわん》とを持《も》つて來《き》てくれた。勘次《かんじ》は平生《へいぜい》何《なん》とも思《おも》はなかつた此《こ》れ等《ら》の器物《きぶつ》にしみ/″\と便利《べんり》を感《かん》じた。彼《かれ》は藥鑵《やくわん》のまだ熱《あつ》い湯《ゆ》を茶碗《ちやわん》に注《つ》いで彼等《かれら》の身《み》を落《お》ちつける唯《たゞ》一|枚《まい》の筵《むしろ》の端《はし》に憩《いこ》うた。俄《にはか》に空洞《からり》とした燒趾《やけあと》を限《かぎ》つて
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