》みた。さうかといつて火《ひ》に當《あた》らうとするのには猶且《やつぱり》火傷《やけど》の疼痛《いたみ》を加《くは》へるだけであつた。彼《かれ》は思出《おもひだ》したやうに泣《な》いては又《また》泣《な》いた。遂《つひ》には泣《な》き疲《つか》れてしく/\と只《たゞ》聲《こゑ》を呑《の》んだ。それが却《かへつ》て勘次《かんじ》とおつぎの心《こゝろ》を掻《か》き亂《みだ》した。疲《つか》れた二人《ふたり》はうと/\としながら到頭《たうとう》眠《ねむ》ることが出來《でき》なかつた。
 燒趾《やけあと》に横《よこた》はつた梁《はり》や柱《はしら》からまだ微《かす》かな煙《けぶり》を立《た》てつゝ次《つぎ》の日《ひ》は明《あ》けた。勘次《かんじ》はおつぎを相手《あひて》に灰燼《くわいじん》を掻《か》き集《あつ》めることに一|日《にち》を費《つひや》した。手桶《てをけ》の冷《つめ》たい握飯《にぎりめし》が手頼《たより》ない三|人《にん》の口《くち》を糊《こ》した。勘次《かんじ》は炭《すみ》のやうに成《な》つた痩《や》せた柱《はしら》や梁《はり》を垣根《かきね》の側《そば》に積《つ》んだ。彼《かれ》は其《そ》の新《あたら》しい手桶《てをけ》へ水《みづ》を汲《く》んでまだ火《ひ》の有《あ》り相《さう》な梁《はり》や柱《はしら》へばしやりと其《そ》の水《みづ》を掛《か》けた。彼《かれ》は灰《はひ》を掻《か》き集《あつ》めて處々《ところどころ》圓錘形《ゑんすゐけい》の小山《こやま》を作《つく》つた。彼《かれ》は灰燼《くわいじん》の中《なか》から鍋《なべ》や釜《かま》や鐵瓶《てつびん》や其《そ》の他《た》の器物《きぶつ》をだん/\と萬能《まんのう》の先《さき》から掻《か》き出《だ》した。鐵製《てつせい》の器物《きぶつ》は其《そ》の形《かたち》を保《たも》つて居《ゐ》ても悉皆《みんな》幾年《いくねん》も使《つか》はずに捨《すて》てあつたものゝやうに變《かは》つて居《ゐ》た。彼《かれ》はそれをそつと大事《だいじ》に傍《そば》へ聚《あつ》めた。茶碗《ちやわん》や皿《さら》や凡《すべ》ての陶磁器《たうじき》は熱火《ねつくわ》に割《は》ねて畢《しま》つて一つでも役《やく》に立《た》つものはなかつた。勘次《かんじ》は赤《あか》く燒《や》けた土《つち》を草鞋《わらぢ》の底《そこ》で段々《だん/\》に
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