》に焔《ほのほ》を吐《は》いて立《た》つて居《ゐ》る。火《ひ》は尚《な》ほ執念《しふね》く木材《もくざい》の心部《しんぶ》を噛《か》んで居《ゐ》る。何物《なにもの》をも吹《ふ》き拂《はら》はねば止《や》むまいとする疾風《しつぷう》は、赤《あか》い※[#「火+畏」、第3水準1−87−57]《おき》を包《つゝ》む白《しろ》い灰《はひ》を寸時《すんじ》の猶豫《いうよ》をも與《あた》へないで吹《ふ》き捲《まく》つた。心部《しんぶ》を噛《か》まれつゝある木材《もくざい》は赤《あか》い齒《は》を喰《く》ひしばつたやうな無數《むすう》の罅《ひゞ》が火《ひ》と煙《けぶり》とを吐《は》いて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は殆《ほと》んど惘然《ばうぜん》として此《こ》の急激《きふげき》な變化《へんくわ》を見《み》た。彼《かれ》は足《あし》もとが踉蹌《よろけ》る程《ほど》疾風《しつぷう》の手《て》に突《つ》かれた。彼《かれ》は庭《には》に立《た》つて泣《な》いて居《ゐ》る與吉《よきち》を見《み》た。與吉《よきち》の横頬《よこほゝ》に印《いん》した火傷《やけど》が彼《かれ》の惑亂《わくらん》した心《こゝろ》を騷《さわ》がせた。勘次《かんじ》は又《また》其《そ》の側《そば》に目《め》を瞑《つぶ》つて後向《うしろむき》に成《な》つて居《ゐ》る卯平《うへい》を見《み》た。卯平《うへい》は何時《いつ》の間《ま》に誰《たれ》がさうしたのか筵《むしろ》の上《うへ》に横《よこ》たへられてあつた。彼《かれ》は少《すくな》い白髮《しらが》を薙《な》ぎ拂《はら》つて燒《や》いた火傷《やけど》のあたりを手《て》で掩《お》うて居《ゐ》た。
「汝《わ》りやどうしたんだ」勘次《かんじ》は忙《せわ》しく聞《き》いた。
「木《き》の葉《は》へ火《ひい》くつゝえたんだ」與吉《よきち》は咽《むせ》び入《い》りながらいつた。
「汝《われ》でも惡戲《いたづら》したんぢやねえか」勘次《かんじ》は遲緩《もどか》しげに烈《はげ》しく追求《つゐきう》した。
「俺《お》ら爺《ぢい》と火《ひい》あたつてたんだ、さうしたらくつゝかつたんだ」さういつて與吉《よきち》は俄《にはか》に聲《こゑ》を放《はな》つて泣《な》いた。彼《かれ》は何《なん》の爲《ため》にさう悲《かな》しくなつたのか寧《むし》ろ頑是《ぐわんぜ》ない彼自身《かれじしん》には分《わか》ら
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