う》した落葉《おちば》は迅速《じんそく》に火《ひ》を誘導《いうだう》して彼《かれ》の横頬《よこほゝ》を舐《ねぶ》つて、彼《かれ》は思《おも》はず聲《こゑ》を放《はな》つたのである。卯平《うへい》は慌《あわ》てて再《ふたゝ》び茶碗《ちやわん》を落《おと》した。彼《かれ》は突然《いきなり》與吉《よきち》を傍《かたはら》に掻《か》き退《の》けた。彼《かれ》はさうして無意識《むいしき》に火《ひ》に成《な》つた落葉《おちば》を掻《か》き出《だ》さうとして、自由《じいう》を失《うしな》うた手《て》の鈍《のろ》い運動《うんどう》が其《そ》の火《ひ》を消《け》すに何《なん》の功果《こうくわ》もなかつた。彼《かれ》は焔《ほのほ》の儘《まゝ》に輕《かる》い落葉《おちば》の籠《かご》を庭《には》へ投《な》げればよかつたのである。疾風《しつぷう》は必《かなら》ず其《そ》の落葉《おちば》を散亂《さんらん》せしめて、火《ひ》は遠《とほ》く燃《も》えながら走《はし》るにしても、片々《へんぺん》たる落葉《おちば》は廣《ひろ》い區域《くゐき》に悉《ことごと》く其《そ》の俤《おもかげ》をも止《とゞ》めないで消滅《せうめつ》して畢《しま》はねば成《な》らぬのであつた。然《しか》しながら慌《あわ》てた卯平《うへい》の手《て》は此《かく》の如《ごと》き簡單《かんたん》で且《かつ》最良《さいりやう》である方法《はうはふ》を執《と》る暇《ひま》がなかつた。火《ひ》は復《また》怒《いか》つて彼《かれ》の頬《ほゝ》を舐《ねぶ》り彼《かれ》の手《て》を燒《や》いた。彼《かれ》の目《め》は昏《くら》んだ。一|時《じ》に激《げき》した落葉《おちば》の火《ひ》はそれが久《ひさ》しく持續《ぢぞく》されなくても老衰《らうすゐ》した卯平《うへい》の心《こゝろ》を奪《うば》ふには餘《あま》りあつた。卯平《うへい》の視力《しりよく》が再《ふたゝ》び恢復《くわいふく》した時《とき》には火《ひ》は既《すで》に天井《てんじやう》の梁《はり》に積《つ》んだ藁束《わらたば》の、亂《みだ》れて覗《のぞ》いて居《ゐ》る穗先《ほさき》を傳《つた》ひて昇《のぼ》つた。火《ひ》は乾燥《かんさう》した藁束《わらたば》の周圍《しうゐ》を舐《ねぶ》つて、更《さら》に其《その》焔《ほのほ》が薄闇《うすぐら》い家《いへ》の内《うち》から遁《のが》れようとして屋根
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