裏《やねうら》を偃《は》うた。それが迅速《じんそく》な火《ひ》の力《ちから》の瞬間《しゆんかん》の活動《くわつどう》であつた。舐《ねぶ》つた火《ひ》は更《さら》に此《こ》れを噛《か》んでずた/\に崩壞《ほうくわい》した藁束《わらたば》は其《そ》の火《ひ》を保《たも》つた儘《まゝ》既《すで》に其《そ》の勢《いきほ》ひを沈《しづ》めた落葉《おちば》の上《うへ》にばら/\と亂《みだ》れ落《おち》て其處《そこ》に復《ま》た火勢《くわせい》が恢復《くわいふく》された。惘然《ばうぜん》として自失《じしつ》して居《ゐ》た卯平《うへい》は藁《わら》の火《ひ》を浴《あ》びた。彼《かれ》は慌《あわ》てゝ戸口《とぐち》へ遁《に》げ出《だ》した時《とき》火《ひ》は既《すで》に赤《あか》い天井《てんじやう》を造《つく》つて居《ゐ》た。煙《けぶり》は四|方《はう》から檐《のき》を傳《つた》ひてむく/\と奔《はし》つて居《ゐ》た。蛇《へび》の舌《した》の如《ごと》くべろ/\と焔《ほのほ》が吐《は》き出《だ》された。吹《ふ》き募《つの》つて居《ゐ》る疾風《しつぷう》は直《す》ぐに其《その》赤《あか》い舌《した》を吹《ふ》き拗切《ちぎ》らうとした。後《あと》から/\と勢力《せいりよく》を加《くは》へて吐《は》き出《だ》す煙《けぶり》や焔《ほのほ》は穗《ほ》の如《ごと》く壓《お》し靡《なび》かされた。
 火《ひ》は瞬間《しゆんかん》に處々《ところ/″\》落《お》ち窪《くぼ》んで窶《やつ》れた屋根《やね》を全《まつた》く包《つゝ》んで畢《しま》つた。卯平《うへい》は數分時《すうふんじ》の前《まへ》に豫期《よき》しなかつた此《こ》の變事《へんじ》を意識《いしき》した時《とき》殆《ほと》んど喪心《さうしん》して庭《には》に倒《たふ》れた。土塊《どくわい》の如《ごと》く動《うご》かぬ彼《かれ》の身體《からだ》からは憐《あはれ》に微《かす》かな煙《けぶり》が立《た》つて地《ち》を偃《は》うて消《き》えた。藁《わら》の火《ひ》を沿《あ》びた時《とき》其《そ》の火《ひ》が襤褸《ぼろ》な彼《かれ》の衣物《きもの》を焦《こが》したのである。然《しか》し其《そ》の火《ひ》は灸《きう》の如《ごと》き跡《あと》をぽつ/\と止《とゞ》めたのみで衣物《きもの》の心部《しんぶ》は深《ふか》く噛《か》まなかつた。埃《ほこり》は彼《か
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