んざ、銜《くうえ》えてぎり/\つとかう手《て》ツ平《ぴら》でぶん廻《まあ》すとぽろうつと噛《か》み切《き》れちやあのがんだから、そんだから今《いま》でも、かうれ、此《こ》の通《とほ》りだ」爺《ぢい》さんはぎり/\と齒《は》を噛《か》み合《あは》せて見《み》せた。
「俺《お》らそれから、喧嘩《けんくわ》ぢや負《ま》けたこたねえだよ、野郎《やらう》何《なん》だつち内《うち》にや打《ぶ》つ張《ぱ》るか、掻《か》つ轉《ころが》すかだな、ごろり轉《ころ》がつた處《ところ》爪先《つまさき》と踵《くびす》持《も》つてかうぐる/\引《ひ》ん廻《まあ》すとどうだ大《えけ》え野郎《やらう》でも起《お》きらんねえだよ、から笑止《をか》しくつて仕《し》やうねえな、えゝか、斯《か》う、かうやんだよ、あゝ、俺《お》ら本當《ほんたう》に強《つえ》えのがんだよ、それ卯平等《うへいら》駄目《だめ》だな後《うしろ》の方《はう》にばかし隱《かく》れてゝからつき」と爺《ぢい》さんは少《すこ》し座《ざ》を退《さが》つて兩手《りやうて》を以《もつ》て喧嘩《けんくわ》の相手《あひて》を苛《いぢ》めるやうな容子《ようす》をして見《み》せた。
「そんだが俺《お》れ旦那《だんな》に云《や》あれてから、家族《うち》の奴等《やつら》ことも怒《おこ》んねえはあ、俺《お》れうめえ處《とこ》見《み》られつちやつたな、いや云《や》あれちや勿體《もつてえ》ながす、本當《ほんたう》に勿體《もつてえ》ねえだよ、お婆《ばあ》さん」爺《ぢい》さんは首《くび》を俛《たれ》て滅切《めつきり》靜《しづ》かになつていつた。さうして彼《かれ》は茶碗《ちやわん》の酒《さけ》をだら/\と零《こぼ》しながらに一口《ひとくち》に嚥《の》んだ。
 此《こ》の時《とき》外《そと》から女房《にようばう》が一人《ひとり》忙《せは》しく來《き》た。女房《にようばう》は佛壇《ぶつだん》の前《まへ》へ行《い》つて
「駐在所《ちうざいしよ》來《き》たよ」悉皆《みんな》の中《なか》へ首《くび》を突《つ》き入《い》れるやうにして竊《そつ》と語《かた》つた。悉皆《みんな》は頻《しき》りに輸※[#「羸」の「羊」に代えて「果」、354−14]《かちまけ》にのみ心《こゝろ》を奪《うば》はれて居《ゐ》た。彼等《かれら》の顏《かほ》はにこ/\としたり又《また》は暫《しばら》くどつぺを掴《
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