つか》まぬものは難《むづ》かしくなつた目《め》を蹙《しが》めたり口《くち》をむぐ/\と動《うご》かしたりして自分《じぶん》は一|向《かう》それを知《し》らないのであつた。彼等《かれら》の各自《めい/\》が持《も》つて居《ゐ》る種々《いろ/\》な隱《かく》れた性情《せいじやう》が薄闇《うすぐら》い室《しつ》の内《うち》にこつそりと思《おも》ひ切《き》つて表現《へうげん》されて居《ゐ》た。女房《はようばう》の言辭《ことば》は悉皆《みんな》の顏《かほ》を唯《たゞ》驚愕《おどろき》の表情《へうじやう》を以《もつ》て掩《おほ》はしめた。一|度《ど》に女房《にようばう》を見《み》た彼等《かれら》には其《そ》の時《とき》まで私語《さゞめ》き合《あ》うた俤《おもかげ》がちつともなかつた。彼等《かれら》は慌《あわ》てゝ寶引絲《はうびきいと》も懷《ふところ》へ隱《かく》して知《し》らぬ容子《ようす》を粧《よそほ》うて圍爐裏《ゐろり》の側《そば》へ集《あつま》つた。
「こつちの方《はう》酷《ひど》く威勢《えせい》えゝから俺《お》らも仲間入《なかまいり》させてもらえてもんだ」寶引《はうびき》の婆《ばあ》さん等《ら》はいつた。
「此《こ》の婆等《ばゝあら》寄《よ》れば觸《さあ》れば博奕《ばくち》なんぞする氣《き》にばかし成《な》つて」爺《ぢい》さんは依然《いぜん》として惡口《わるくち》を止《や》めなかつた。
「かうだ婆等《ばゞあら》だつてさうだに荷厄介《にやつけえ》にしねえでくろよ、こんで俺《お》ら家《ぢ》ぢやまあだ俺《お》れなくつちや闇《くらやみ》だよおめえ、嫁《よめ》があの仕掛《しかけ》だもの」婆《ばあ》さんは更《さら》に
「俺《お》らあ仲間《なかま》も寺錢《てらせん》で後《あと》買《か》あから、獨《ひとり》でむつゝりしてねえで一《ひと》つやらつせえね」と卯平《うへい》へ杯《さかづき》を侑《すゝ》めた。一|同《どう》の威勢《ゐせい》が漸次《しだい》に卯平《うへい》の心《こゝろ》を惹《ひ》き立《た》てゝ到頭《たうとう》彼《かれ》の大《おほ》きな手《て》に茶碗《ちやわん》を執《と》らせた。婆《ばあ》さん等《ら》の袂《たもと》が觸《ふ》れて輕《かる》く成《な》つてた徳利《とくり》が倒《たふ》された。婆《ばあ》さん等《ら》は慌《あわ》てゝ手拭《てぬぐひ》でふかうとした。小柄《こがら》な爺《ぢい》
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