や》だつて今《いま》一|遍《ぺん》云《ゆ》つて見《み》ろ、俺《お》れ目玉《めだま》の黒《くれ》え内《うち》やさうはえがねえぞつちんだから、いや本當《ほんたう》に俺《お》ら聽《き》かねえだから」彼《かれ》は髮《かみ》が餘計《よけい》に濕《うるほ》ひを増《ま》して悉皆《みんな》の耳《みゝ》の底《そこ》に徹《とほ》る程《ほど》呶鳴《どな》つて見《み》せた。
「おめえ見《み》てえにさうは行《い》かねえよ、他人《たにん》は」卯平《うへい》はぽさりといつた。
「本當《ほんたう》におめえ見《み》てえなもなねえよ、若《わ》けえ時《とき》から毎晩《まいばん》酩酊《よつぱら》つちや後夜《ごや》が鷄《とり》でも構《かま》あねえ馬《うま》曳《ひい》て歸《けえ》つちや戸《と》の割《わ》れる程《ほど》叩《たゝ》いて、さうしちや馬《うま》の裾湯《すそゆ》沸《わ》えてねえつて云《ゆ》つちや家族《うち》の者《もの》こと追《お》ひ出《だ》してなあ、百姓《ひやくしやう》はおめえ夜中《よなか》まで眠《ねむ》んねえで待《ま》つちや居《ゐ》らんねえな、そんだがおめえも相續人《さうぞくにん》善《よ》く出來《でき》て仕合《しあはせ》だよなあ」側《そば》に居《ゐ》て先刻《さつき》から聞《き》いて居《ゐ》た婆《ばあ》さんの一人《ひとり》がいつた。其《そ》の服裝《なり》は他《た》の老人等《としよりら》とは異《ちが》つて居《ゐ》た。
「俺《お》れにや打《ぶ》ち出《だ》されつとも、此《こ》んで俺《お》ら力《ちから》は強《つを》かつたかんな、仕事《しごと》ぢや卯平《うへい》も強《つを》かつたが、かうだ大《えけ》え體格《なり》して相撲《すまふ》ぢや俺《お》れにやかたでぺた/\だ。俺《お》らやあつち内《うち》にや打《ぶ》ん投《な》げつちやあだから、あゝ、俺《お》ら腕《うで》ばかしぢやねえ、そらつ位《くれえ》だから齒《は》も強《つえ》えだよ、俺《お》ら麥打《むぎぶち》ん時《とき》唐箕《たうみ》立《た》てゝちや半夏桃《はんげもゝ》貰《もら》つたの、ひよえつと口《くち》さ入《せ》えたつきり、核《たね》までがり/\噛《かぢ》つちやつたな、奇態《きたい》だよそんだが桃《もゝ》噛《かぢ》つてつと鼻《はな》ん中《なか》さ埃《ほこり》へえんねえかんな、俺《お》れが齒《は》ぢや誰《た》れでも魂消《たまげ》んだから眞鍮《しんちう》の煙管《きせる》な
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