れてやる爲《ため》であつた。飯《めし》つぎには大抵《たいてい》菱餅《ひしもち》と小豆飯《あづきめし》とが入《い》れられてあつた。小豆飯《あづきめし》はどれも/\米《こめ》が能《よ》く搗《つ》けてないのでくすんでさうして腹《はら》の裂《さ》けた小豆《あづき》が粉《こ》を吐《は》いて餘計《よけい》に粘氣《ねばりけ》のないぼろ/\な飯《めし》になつて居《ゐ》た。それでも飯《めし》つぎの異《ことな》る毎《ごと》に小豆飯《あづきめし》の赤《あか》さが幾《いく》らかづつ變《かは》つて居《ゐ》た。子供等《こどもら》は變《かは》つた小豆飯《あづきめし》が一箸々々《ひとはし/\》と殖《ふ》えて行《ゆ》くのが嬉《うれ》しくて、外《そと》へ轉《ころ》がつたのは慌《あわ》てゝ手《て》でとつて紙《かみ》へ載《の》せた。小豆飯《あづきめし》は昨日《きのふ》に異《ことな》つたことはなかつたが、菱餅《ひしもち》は昨日《きのふ》のやうに米《こめ》のではなくてどれでも粟《あは》ばかりであつた。子供等《こどもら》は大小《だいせう》異《ことな》つた粟《あは》の菱餅《ひしもち》が一つは一つと紙《かみ》の上《うへ》に分量《ぶんりやう》を増《ま》して積《つ》まれるのを樂《たの》しげにして、自分《じぶん》の紙《かみ》から兩方《りやうはう》の隣《となり》の紙《かみ》から遠《とほ》くの方《はう》から、それから一つ/\に屈《かゞ》んで箸《はし》を動《うご》かして居《ゐ》る婆《ばあ》さん等《ら》の忙《せは》しい手《て》もとに目《め》を奪《と》られるのであつた。婆《ばあ》さん等《ら》はそは/\としつゝ狹《せま》いので互《たがひ》に衝突《つきあた》つては騷《さわ》ぎながら、自分《じぶん》の家《いへ》に居《ゐ》る時《とき》のやうな節制《たしなみ》が少《すこ》しも保《たも》たれて居《ゐ》なかつた。
「さあ、汝《わ》つ等《ら》此《こ》れつきりだ」婆《ばあ》さん等《ら》が空虚《から》になつた最後《さいご》の飯《めし》つぎの底《そこ》を叩《たゝ》いて腰《こし》を伸《の》ばした時《とき》、子供等《こどもら》は危《あぶ》な相《さう》な手《て》で漸《やうや》く紙《かみ》を包《つゝ》んで、がた/\と先《さき》を爭《あらそ》うて立《た》つた。下駄《げた》を遠《とほ》くへ跳《は》ね飛《と》ばされたり、轉《ころが》つたり、紙包《かみづゝみ》の餅《も
前へ
次へ
全478ページ中379ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング