ゐ》ながら尚《なほ》生命《せいめい》を保《たも》ちつゝ日毎《ひごと》に憐《あは》れげな花《はな》をつけた。※[#「虫+車」、第3水準1−91−55]《こほろぎ》が滅入《めい》る樣《やう》に其《そ》の蔭《かげ》に鳴《な》いた。空《そら》を遙《はるか》に飛《と》んだ椋鳥《むくどり》の群《むれ》が幾《いく》つかに分《わか》れて、地上《ちじやう》に低《ひく》く騷《さわ》いでは梢《こずゑ》を求《もと》めてぎい/\と鳴《な》きつゝ落付《おちつ》かなかつた。到《いた》る處《ところ》荒《あ》れた藪《やぶ》の端《はし》や土手《どて》の瘠《や》せた篠《しの》の梢《こずゑ》に乘《の》り掛《かゝ》つて、之《これ》を噛《か》めば齒《は》がこぼれるといはれて居《ゐ》る毒《どく》な仙人草《せんにんさう》が其《そ》の手《て》を幾《いく》らでも延《のば》して思《おも》ひ切《き》つて蟠《わだかま》つた蔓《つる》が白《しろ》い花《はな》を一|杯《ぱい》につけて、さうして活々《いき/\》としたものは自分《じぶん》のみであることを誇《ほこ》るものゝ如《ごと》く、秋風《あきかぜ》に吹《ふ》かれつゝ白《しろ》い布《ぬの》の樣《やう》にふは/\と動《うご》いた。
勘次《かんじ》の村落《むら》は臺地《だいち》であるのと鬼怒川《きぬがは》の土手《どて》が篠《しの》の密生《みつせい》した根《ね》の力《ちから》を以《もつ》て僅《わづか》ながら崩壤《ほうくわい》する土《つち》を引《ひ》き止《と》めたので損害《そんがい》が輕《かる》く濟《す》んだ。それでも幾日《いくにち》か降《ふ》り續《つゞ》いた雨《あめ》が水《みづ》を蓄《たくは》へて低《ひく》い畑《はた》は暫《しばら》く乾《かわ》くことがなかつた。田《た》も其《そ》の水《みづ》の爲《ため》に浸《ひた》つた箇所《かしよ》が少《すくな》くなかつた。勘次《かんじ》は日《ひ》となく夜《よ》となく田畑《たはた》を歩《ある》いて只管《ひたすら》心《こゝろ》を惱《なや》ましたが、漸《やうや》く自分《じぶん》の田畑《たはた》の作物《さくもつ》が僅《わづか》な損害《そんがい》に畢《をは》つたことを慥《たしか》めた時《とき》は彼《かれ》は激甚《げきじん》な被害地《ひがいち》の状况《じやうきやう》を傳聞《でんぶん》して自分《じぶん》の寧《むし》ろ幸《さいはひ》であつたことを竊《ひそか》に悦《
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