つきやう》を片口《かたくち》へ出《だ》しておつたの側《そば》へ侑《すゝ》めた。勘次《かんじ》は一つ撮《つま》んでかり/\と噛《かじ》つた。少《すこ》し丸《まる》みがかつた頬《ほゝ》に絶《たえ》ず微笑《びせう》を含《ふく》んで勘次《かんじ》のいふことを聞《き》いて居《ゐ》たおつたは何《なに》か更《さら》にいはうとして一寸《ちよつと》躊躇《ちうちよ》しつゝある容子《ようす》が見《み》えた。勘次《かんじ》もおつぎもそれは知《し》らなかつた。おつたは一|杯《ぱい》に注《つ》いである茶碗《ちやわん》へ又《また》茶《ちや》を注《つ》がうとして俄《にはか》に止《や》めた。おつたは茶碗《ちやわん》をぐつと嚥《の》み干《ほ》した。
「こんで同胞《きやうでえ》のえゝ噺《はなし》聞《き》くな惡《わる》かねえもんだよ、有繋《まさか》自分《じぶん》ばかしよくつて他《ほか》の同胞《きやうでえ》にや管《かま》あねえつちいものもねえかんな」といつて庭《には》の便所《べんじよ》へ立《た》つてそれから再《ふたゝ》び上《あが》り框《がまち》に腰《こし》を卸《おろ》した。
「俺《お》らおめえにちつと相談《さうだん》に乘《の》つて貰《もれ》えてえと思《おも》ふこと有《あ》つて來《き》たんだつけがなよ」おつたは態《わざ》と改《あらた》まつた容子《ようす》でなくいひ掛《か》けた。
「何《なん》だんべ」勘次《かんじ》はふつと彼《かれ》の平生《へいぜい》に還《かへ》らうとして例《いつも》の不安《ふあん》らしい目《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つておつたを見《み》た。
「なあにたえしたこつちやねえが、盲目《めくら》の野郎《やらう》げ嫁《よめ》世話《せわ》されるもんだからどうしたもんだんべかと思《おも》つてよ」
「※[#「姉」の正字、「女+※[#第3水準1−85−57]のつくり」、287−11]《あね》貰《もら》へたけりや他人《ひと》にや管《かま》あこたあ有《あ》んめえな」勘次《かんじ》はおつたがゆつくりといふのが畢《をは》らぬのにそつけなくいつた。
「さう云《ゆ》つちめえばさうだがなよ、そんだつて同胞《きやうでえ》に一噺《ひとはなし》もねえなんて後《あと》で文句《もんく》云《ゆ》はれても、默《だま》つてちやおめえ口《くち》が開《あ》けめえな、そんだから俺《お》らおめえげ耳打《みゝうち》して置
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