、第4水準2−94−57]《そんな》に作《つく》つちや大層《たえそ》なもんぢやねえかな」おつたは驚《おどろ》いたやうにいつた。
「陸稻《をかぼ》も地《ぢ》が珍《めづ》らしい内《うち》は出來《でき》るもんだわ、穗《ほ》の出《で》た割《わり》にや分《ぶ》は拔《ぬ》けねえが、そんでも開墾《おこ》したばかしにや草《くさ》は出《で》ねえから手間《てま》が要《え》らねえしな、それに肥料《こやし》つちやなんぼもしねえんだから、尤《もつと》も三|年《ねん》も作《つく》つちや其《そ》の手《て》にや行《い》かねえが、其《そ》ん時《とき》や以前《もと》の山林《やま》になんだから可怖《おつかね》えこともなんにもねえのよ」
「餘《よ》つ程《ぽど》とれべえな、三四|反歩《たんぶり》も作《つく》つちやなあ」
「こんで穗《ほ》の出際《でぎは》に雨《あめ》でもえゝ鹽梅《あんべえ》なら、反《たん》で四|俵《へう》なんざどうしてもとれべと思《おも》つてんのよ」
「陸稻《をかぼ》とも云《い》はんねえもんだな、以前《めえかた》と違《ちが》つて今《いま》の時世《ときよ》ぢやさうだからこんで場所《ばしよ》によつちや、百姓《ひやくしやう》にもたえした起《お》き轉《ころ》びがあるのよなあ、俺《お》ら方《はう》見《み》てえに洪水《みづ》で持《も》つてかれてばかし居《ゐ》つ處《とこ》も有《あ》んのに山林《やま》んなかで米《こめ》とれるなんて」
「さうよ、此處《こゝ》らは洪水《みづ》の心配《しんぺえ》はさうだにしねえでもえゝ處《とこ》だかんな」勘次《かんじ》は從來《これまで》其《そ》の間《あひだ》がどうであつたにしても偶然《ぐうぜん》逢《あ》つたおつたに對《たい》してだん/\噺《はな》して居《ゐ》るうちには同《おな》じ乳房《ちぶさ》に縋《すが》つた骨肉《こつにく》の關係《くわんけい》が彼《かれ》の淺猿《さも》しい心《こゝろ》の底《そこ》を披瀝《ひら》いてそれを陰蔽《いんぺい》するのには餘《あま》りに彼《かれ》を放心《うつかり》とさせたのであつた。
「おつう、彼《あ》の薤《らつきやう》でも出《だ》して見《み》せえ、土用前《どようめえ》に採《と》つて直《す》ぐ漬《つけ》たんだから、はあよかんべえ」
 勘次《かんじ》は快《こゝろ》よくおつぎに命《めい》じた。おつぎは古《ふる》い醤油樽《しやうゆだる》から白漬《しろづけ》の薤《ら
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