も》に落《お》ちて殆《ほとん》ど直射《ちよくしや》する日光《につくわう》を遮《さへぎ》つて居《ゐ》る栗《くり》の木《き》の陰《かげ》から遠《とほ》ざかつて遙《はるか》に先《さき》の方《はう》まで轉《ころ》がつて行《ゆ》く。小麥《こむぎ》と違《ちが》つて濕《しめ》つぽい夏蕎麥《なつそば》は幹《から》がくた/\として幾度《いくど》も叩《たゝ》きつけねばなか/\落《お》ちない。それでも種子《み》は不規則《ふきそく》な成熟《せいじゆく》をして居《ゐ》るので、まだ青《あを》いのはどうしてもしがみ附《つ》いて居《ゐ》る。二人《ふたり》は藁《わら》で縛《くゝ》つた大《おほ》きな束《たば》を解《と》いては粘《ねば》つた物《もの》でも引《ひ》き剥《はが》す樣《やう》に攫《つか》み取《と》つて熱心《ねつしん》に忙《せは》しく臼《うす》の腹《はら》へ叩《たゝ》きつけた。庭《には》は卯平《うへい》が始終《しじゆ》草《くさ》を※[#「てへん+劣」、第3水準1−84−77]《むし》つて掃除《さうぢ》してあるのに、蕎麥《そば》を打《う》つ前《まへ》に一|旦《たん》丁寧《ていねい》に箒《はうき》が渡《わた》つたので見《み》るから清潔《せいけつ》に成《な》つて居《ゐ》たのである。勘次《かんじ》は暑《あつ》いので紺《こん》の襦袢《じゆばん》も腰《こし》のあたりへだらりとこかして、焦《こげ》たやうな肌膚《はだ》をさらけ出《だ》して居《ゐ》る。彼《かれ》は更《さら》に栗《くり》の木《き》の茂《しげ》つた葉《は》の間《あひだ》から針《はり》の先《さき》で突《つ》くやうにぽちり/\と洩《も》れて射《さ》す光《ひかり》を避《さ》けて例《いつ》もの如《ごと》く藺草《ゐぐさ》の編笠《あみがさ》を被《かぶ》つて、麻《あさ》の紐《ひも》を顎《あご》でぎつと結《むす》んである。毎日《まいにち》必《かなら》ず汗《あせ》でぐつしりと濕《しめ》るので、其《そ》の強靱《きやうじん》な纎維《せんゐ》の力《ちから》が脆《もろ》く成《な》つて、秋《あき》の冷《つめ》たい季節《きせつ》までにはどうしても中途《ちうと》で一|度《ど》は換《か》へねばならぬと勘次《かんじ》が自慢《じまん》して居《ゐ》る紐《ひも》は埃《ほこり》が加《くは》はつて汚《よご》れて居《ゐ》た。勘次《かんじ》はおつたの姿《すがた》をちらりと垣根《かきね》の入口《いりぐ
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