うきう》せずに五|錢《せん》か十|錢位《せんぐらゐ》づゝ懷錢《ふところせん》を出《だ》して能《よ》く選《すぐ》つた藁《わら》を其處《そこ》此處《こゝ》で買《か》つて、穗先《ほさき》の處《ところ》を持《もつ》ては肩《かた》から打《ぶ》つ掛《か》けてがさ/\と背負《せお》つて來《く》るのである。藁《わら》の小《ちひ》さな極《きま》つた束《たば》が一|把《は》は大抵《たいてい》一|錢《せん》づゝであつた。其《そ》の一|把《は》の藁《わら》が繩《なは》にすれば二|房半位《ばうはんぐらゐ》で、草鞋《わらぢ》にすれば五|足《そく》は仕上《しあが》るのであつた。それで彼《かれ》の一|日《にち》の仕事《しごと》は繩《なは》ならば二十|房《ばう》の大束《おほたば》が一|把《は》、草鞋《わらぢ》ならば五|足《そく》といふ處《ところ》なので、一|房《ばう》の繩《なは》が七|錢《せん》五|毛《まう》で一|足《そく》の草鞋《わらぢ》が一|錢《せん》五|厘《りん》といふ相場《さうば》だからどつちにしても一|日《にち》熱心《ねつしん》に手《て》を動《うご》かせば彼《かれ》は六七|錢《せん》の儲《まうけ》を獲《え》るのである。卯平《うへい》が求《もと》める副食物《ふくしよくもつ》は一|日《にち》僅《わづか》に二|錢《せん》もあれば十|分《ぶん》なので彼《かれ》は毎日《まいにち》藁《わら》を使《つか》つて居《を》れば四五|錢《せん》づつの剰餘《じようよ》を得《う》る理由《わけ》ではあるが、品物《しなもの》を商《あきな》ひに出《で》る日《ひ》を別《べつ》にしても氣《き》が乘《の》らないといつては朝《あさ》からごろりと轉《ころ》がつて居《ゐ》ることもあるので平均《へいきん》して見《み》ると一|日《にち》が幾《いく》らにも成《な》らないのであつた。然《しか》し其《そ》れ丈《だけ》でさへ卯平《うへい》は始終《しじう》財布《さいふ》の錢《ぜに》の出入《でいり》するのを心丈夫《こゝろぢやうぶ》に思《おも》ふのであつた。
 勘次《かんじ》はむつゝりとした卯平《うへい》の戸口《とぐち》を覗《のぞ》いたこともないが、卯平《うへい》が直《すぐ》に來《き》ても來《こ》なくても飯《めし》の出來《でき》た時《とき》に喚《よ》びに行《ゆ》くのはおつぎであつた。卯平《うへい》は熱心《ねつしん》に藁仕事《わらしごと》をする時《とき
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