》いながらにどうにか土間《どま》も拵《こしら》へて其處《そこ》へは自在鍵《じざいかぎ》を一《ひと》つ吊《つる》して蔓《つる》のある鐵瓶《てつびん》を懸《かけ》たり小鍋《こなべ》を掛《か》けたりすることが出來《でき》る樣《やう》にした。彼《かれ》は勘次《かんじ》から幾《いく》らかづゝの米《こめ》や麥《むぎ》を分《わ》けさせて別居《べつきよ》した當座《たうざ》は自分《じぶん》の手《て》で煮焚《にたき》をした。それが却《かへつ》て氣藥《きらく》でさうして少《すこ》しづゝは彼《かれ》の舌《した》に佳味《うま》く感《かん》ずる程度《ていど》の物《もの》を求《もと》めて來《く》ることが出來《でき》た。
然《しか》しさうして居《ゐ》ても寒《さむ》さが非常《ひじやう》に嚴《きび》しい時《とき》は彼《かれ》は只《たゞ》狹苦《せまくる》しい小屋《こや》の中《なか》に麁朶《そだ》を少《すこ》しづつ折《を》り燻《く》べるよりも比較的《ひかくてき》廣《ひろ》い竈《かまど》の前《まへ》で横《よこ》に轉《ころ》がした大籠《おほかご》からがさ/\と木《こ》の葉《は》を掻《か》き出《だ》してぼう/\と焔《ほのほ》を立《た》てゝ暖《あたゝ》まりたい心持《こゝろもち》がするのであつた。それで彼《かれ》は勘次《かんじ》の留守《るす》には竈《かまど》の前《まへ》で悠長《いうちやう》に木《こ》の葉《は》を焚《た》いて顏《かほ》や手足《てあし》の皮《かは》の燒《や》けた樣《やう》に赤《あか》くなるまであたつた。勘次《かんじ》は時々《とき/″\》持《も》ち込《こ》んだ麁朶《そだ》や木《こ》の葉《は》が理由《わけ》もなく減《へ》つて居《ゐ》ることを知《し》つて不快《ふくわい》な感《かん》を懷《いど》いてはこつそりと呟《つぶや》きつゝおつぎに當《あた》るのであつた。
卯平《うへい》は暫《しばら》く隱居《いんきよ》に落付《おちつ》いてからは一|錢《せん》づゝでも懷《ふところ》を拵《こし》らへねばならぬといふ決心《けつしん》から促《うなが》されて、毎日《まいにち》煙管《きせる》を横《よこ》に銜《くは》へては悠長《いうちやう》ではあるが、然《しか》も間斷《かんだん》なく繩《なは》をちより/\と綯《な》つたり、それから草鞋《わらぢ》を作《つく》つたりした。彼《かれ》は原料《げんれう》の藁《わら》を勘次《かんじ》に要求《え
前へ
次へ
全478ページ中300ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長塚 節 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング