仕事《しごと》は只《たゞ》一|日《にち》で畢《をは》つた。長《なが》い嵩張《かさば》つた粟幹《あはがら》で手薄《てうす》く葺《ふ》いた屋根《やね》は此《こ》れも職人《しよくにん》の手《て》を借《か》らなかつた。必要《ひつえう》な繩《なは》は卯平《うへい》が丈夫《ぢやうぶ》に綯《な》つて置《お》いた。それから壁《かべ》を塗《ぬ》るのには間《あひだ》を措《お》いて二三|日《にち》かゝつた。勘次《かんじ》も有繋《さすが》に勞力《らうりよく》を惜《をし》まなかつた。彼《かれ》は粟幹《あはがら》が葺《ふ》き上《あ》げられた次《つ》ぎの日《ひ》から二三|日《にち》近所《きんじよ》の馬《うま》を借《か》りて田《た》の傍《そば》の畑《はたけ》から土《つち》を運搬《つ》けた。畑《はたけ》には其《そ》の時《とき》麥《むぎ》が青《あを》く生《は》えて居《ゐ》たが、それでも持主《もちぬし》は畑《はたけ》が減《へ》るだけ田《た》の面積《めんせき》が増《ま》す理由《わけ》なのと、土《つち》の分量《ぶんりやう》も格別《かくべつ》の事《こと》でないのとで切《き》り取《と》ることを否《いな》まなかつた。庭《には》へ卸《おろ》した土《つち》にはちらり/\と青《あを》い麥《むぎ》の軟《やはら》かな葉《は》が交《まじ》つて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は夕方《ゆふがた》に成《な》つて馬《うま》を返《かへ》しながら、一|日《にち》の餌料《ゑさ》としておつぎに煮《に》させた麥《むぎ》を笊《ざる》へ入《い》れて、それから刻《きざ》んだ藁《わら》も添《そ》へてやつた。勘次《かんじ》は其《そ》の序《ついで》に餘計《よけい》な藁《わら》を切《き》つた。土《つち》は畢《しまひ》の日《ひ》の夕方《ゆふがた》に周圍《しうゐ》に土手《どて》のやうな輪《わ》を拵《こしら》へて其處《そこ》に水《みづ》を打《う》つてはぐちや/\と足《あし》で溲《こ》ねながら刻《きざ》んだ藁《わら》を撒《ま》いては踏《ふ》み込《こ》んでさうして一|晩《ばん》置《お》いた。さういふ間《あひだ》に卯平《うへい》は鉈《なた》で篠《しの》を幾《いく》つかに裂《さ》いて柱《はしら》と柱《はしら》との間《あひだ》へ壁《かべ》の下地《したぢ》に細《こま》かな格子目《かうしめ》を編《あ》んで居《ゐ》た。篠《しの》は東隣《ひがしどなり》の主人《しゆじん》から請《こ》うて
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