やに》の浸《し》みた煙管《きせる》をぢう/\と鳴《な》らしながら難《むづ》かしい顏《かほ》が暫《しばら》く解《と》けなかつた。
卯平《うへい》は清潔好《きれいずき》なのでむつゝりとしながら獨《ひとり》で居《ゐ》る時《とき》には草箒《くさばうき》で土間《どま》の軒《のき》の下《した》を掃《は》いては鷄《とり》が足《あし》の爪《つめ》で掻《か》き亂《みだ》した庭葢《にはぶた》の周圍《あたり》をも掃《は》きつけて置《お》いた。彼《かれ》は座敷《ざしき》の内《うち》も掃除《さうぢ》をして毎朝《まいあさ》蒲團《ふとん》を整然《ちやん》と始末《しまつ》する樣《やう》に寡言《むくち》な口《くち》からおつぎに吩咐《いひつ》けた。清潔《きれい》に成《な》ることは勘次《かんじ》も惡《わる》いことには思《おも》はなかつたが、幾《いく》らもない家財道具《かざいだうぐ》へ少《すこ》しでも手《て》を掛《か》けられるのが懷《ふところ》でも探《さぐ》られる樣《やう》に勘次《かんじ》には何《なん》となく不安《ふあん》の念《ねん》が起《おこ》されるのであつた。勘次《かんじ》の目《め》には卯平《うへい》が能《よ》く村落《むら》の店《みせ》に行《ゆ》くのは贅澤《ぜいたく》な老人《としより》である樣《やう》に僻《ひが》んで見《み》える廉《かど》もあつた。只《たゞ》さうして居《ゐ》る間《うち》に舊暦《きうれき》の年末《ねんまつ》が近《ちか》づいて何處《どこ》の家《うち》でも小麥《こむぎ》や蕎麥《そば》の粉《こ》を挽《ひ》いた。
卯平《うへい》は時々《とき/″\》は東隣《ひがしとなり》の門《もん》をも潜《くゞ》つた。主人夫婦《しゆじんふうふ》は丈夫《ぢやうぶ》だといつても窶《やつ》れた卯平《うへい》を見《み》ると憐《あは》れになつて
「身體《からだ》はどうしたえ」と能《よ》く聞《き》いた。
「えゝ、今分《いまぶん》ぢや、さうだに惡《わ》りいつちこともねえが」と卯平《うへい》はいつも煮《に》え切《き》らぬいひ方《かた》をして、其《そ》れを聞《き》かれることを有繋《さすが》に心《こゝろ》の内《うち》に悦《よろこ》んで窪《くぼ》んだ目《め》を蹙《しか》める樣《やう》にした。
「それでも勘次《かんじ》は能《よ》くするかえ」内儀《かみ》さんが聞《き》けば
「ありや、はあ、以前《めえかた》つからあゝゆんだから」卯平《う
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