へい》はぶすりといふのである。
「おつぎはどうだえ」
「ありやあそれ、勘次《かんじ》たあ違《ちが》あから、何《なん》ちつても有繋《まさか》赤《あか》ん坊《ばう》ん時《とき》つからのがだから」
「節挽《せちびき》はたんとした容子《ようす》かえそれでも」
「えゝ、おつうこと連《つ》れてつて、南《みなみ》で挽《ひ》くなあ挽《ひ》いたやうだが、桶《をけ》さ入《せ》えた儘《まゝ》で蓋《ふた》したつ切《きり》藏《しま》つて置《お》くから、わしやどのつ位《くれえ》あるもんだか見《み》もしねえが」
「勘次《かんじ》は軟《やはら》かい物《もの》でも少《すこ》しは拵《こしら》えてくれるかね」
「えゝ、毎日《まいんち》同士《どうし》にたべちや居《ゐ》んだがなあに齒《は》せえ丈夫《ぢやうぶ》なら粗剛《こうえ》つたつて管《かま》やしねえが」
「それぢや蕎麥粉《そばこ》でも少《すこ》し遣《や》らうかね蕎麥掻《そばがき》でも拵《こしら》へてたべた方《はう》が善《い》いよ、蕎麥《そば》に打《う》つちや冷《ひ》えるが蕎麥掻《そばがき》は暖《あつた》まるといふからね」内儀《かみ》さんは木綿《もめん》で作《つく》つた袋《ふくろ》へ蕎麥粉《そばこ》を二|升《しやう》ばかり入《い》れて
「勘次《かんじ》も泣《な》きだから、それでも今《いま》に生計《くらし》もだん/\善《よ》くなんだらうから、さうすりや惡《わる》くばかりもすまいよ、どうも昔《むかし》から合性《あひしやう》が惡《わる》いんだからね、まあ年齡《とし》とつたら仕方《しかた》がないから我慢《がまん》して居《ゐ》るんだよ、餘《あんま》り酷《ひど》けりや他人《ひと》が共々《とも/″\》見《み》ちや居《ゐ》ないから、それだが勘次《かんじ》も有繋《まさか》それ程《ほど》でもないんだらうしね」内儀《かみ》さんは慰《なぐさ》めていつた。卯平《うへい》は蕎麥粉《そばこ》を大事《だいじ》にして、勘次《かんじ》が開墾《かいこん》に出《で》た後《あと》で藥罐《やくわん》の湯《ゆ》を沸《わか》しては蕎麥掻《そばがき》を拵《こしら》へてたべた。其《そ》の頃《ころ》は彼《かれ》の提《さ》げて來《き》た二|罎《びん》の醤油《しやうゆ》はもう無《な》くなつて居《ゐ》た。彼《かれ》は其《そ》の減《へ》つて行《ゆ》くのを更《さら》に惜《おし》いとは思《おも》はなかつたが、然《しか》し
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