か》にや何《なん》だね入《へ》えつてんなあ、人形坊《にんぎやうばう》だつて本當《ほんたう》かね」前《まへ》の方《はう》に居《ゐ》た若《わか》い衆《しゆ》が巫女《くちよせ》の荷物《にもつ》へ手《て》を掛《かけ》ていつた。
「なあに今《いま》ぢや幣束《へいそく》だとよ」と他《た》の者《もの》がいつた。
「此《こ》ら見《み》せらんねえんでさ、此《こ》れ見《み》られつと何程《なんぼ》寄《よ》せて見《み》ても當《あた》んなくなつちやつてね、自分《じぶん》で居《ゐ》ねえ間《ま》に見《み》らつても屹度《きつと》知《し》れんでさ」婆《ばあ》さんは風呂敷《ふろしき》を捲《まく》り掛《かけ》た若《わか》い衆《しゆ》の手《て》をそつと拂《はら》つていつた。さうすると
「見《み》せらんねえよ、其《そ》れが種《たね》だから」呶鳴《どな》つたものがあつた。
さういふ騷《さわ》ぎをして居《ゐ》る間《ま》に幾度《いくど》かもぢ/\と身體《からだ》を動《うご》かして居《ゐ》た勘次《かんじ》は思《おも》ひ切《き》つて婆《ばあ》さんの前《まへ》へ進《すゝ》んだ。
「わしげ一つ寄《よ》せて見《み》ておくんなせえ、死口《しにぐち》でがさ」
「そんぢや笹《さゝ》つ葉《ぱ》折《を》つちよつて來《き》ておくんなせえ」巫女《くちよせ》の婆《ばあ》さんはいつた。
「此方《こつち》で折《を》つちよつて遣《や》んべ」と勘次《かんじ》が立《た》ち掛《かけ》た時《とき》後《うしろ》の方《はう》で呶鳴《どな》つた。暫《しばら》くして小《ちひ》さな竹《たけ》の葉《は》が手《て》から手《て》へ傳《つた》へられて茶碗《ちやわん》の水《みづ》の中《なか》に置《お》かれた。一|同《どう》は再《ふたゝ》び靜《しづ》まつた。勘次《かんじ》は竹《たけ》の葉《は》を以《もつ》て茶碗《ちやわん》の水《みづ》を三|度《ど》掻《か》き廻《まは》してそつと手《て》を放《はな》した。ランプの光《ひかり》に竹《たけ》の葉《は》は水《みづ》から出《で》た部分《ぶぶん》は青《あを》く、水《みづ》に沒《ぼつ》した部分《ぶぶん》は水銀《すゐぎん》のやうに白《しろ》く光《ひか》つた。巫女《くちよせ》の婆《ばあ》さんは先刻《さつき》と同《おな》じく箱《はこ》へ肱《ひぢ》を突《つ》いて
「能《よ》く喚《よ》び出《だ》してくれたぞよう……」と極《きま》つたやうな句《く》
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