相手《あひて》は益《ます/\》惡口《あくこう》を逞《たくま》しくした。群衆《ぐんしふ》は一聲《ひとこゑ》の畢《をは》る毎《ごと》に笑《わら》ひどよめいた。
「篦棒《べらぼう》、さうだ軟《やつ》けえ面《つら》で風《かぜ》吹《ふ》く處《とこ》歩《ある》けるもんぢやねえ」爺《ぢい》さんはむきに成《な》つていつた。
「どうした赤《あけ》え手拭《てねげ》被《かぶ》らせらつたんべえ」
「俺《お》らさうだ手拭《てねげ》なんざあ被《かぶ》つたこたねえよ」
「そんでも疱瘡神《はうそうがみ》は赤《あけ》え手拭《てねげ》好《す》きだつちげな」
「そんだつて俺《お》ら被《かぶ》んねえよ」痘痕《あばた》の爺《ぢい》さんはすつかり悄《しを》れて畢《しま》つた。群集《ぐんしふ》は皆《みな》腹《はら》を抱《かゝ》へた。
「どうれ、俺《お》ら歸《けえ》つて牛蒡《ごぼう》でも拵《こせ》えべえ、明日《あした》天秤棒《てんびんぼう》檐《かつ》いで出《で》る支障《さはり》にならあ」剽輕《へうきん》な相手《あひて》は思《おも》ひ出《だ》したやうにいつた。
「どうせ、おめえ等《ら》やうに紺屋《こんや》の弟子《でし》見《み》てえな手足《てあし》の者《も》な牛蒡《ごばう》でも檐《かつ》いで歩《ある》くのにや丁度《ちやうど》よかんべ」復讎《ふくしう》でも仕得《しえ》たやうな容子《ようす》で爺《ぢい》さんはいつた。
「資本《もとで》の二|兩《りやう》二|分《ぶ》位《ぐれえ》でこんで餓鬼奴等《がきめら》までにや四五|人《にん》も命《いのち》繋《つな》いで行《い》くのにや赤《あけ》え手拭《てねげ》でも被《かぶ》つてる樣《やう》な放心《うつかり》した料簡《れうけん》ぢや居《ゐ》らんねえかんな」彼《かれ》は復《ま》た爺《ぢい》さんの頭《あたま》へ手《て》を掛《か》けていつてついと行《い》つて畢《しま》つた。後《あと》では波《なみ》が巖《いは》に打《う》ちつける樣《やう》に暫《しば》らく騷《さわ》いだ。若《わか》い女《をんな》は皆《みな》十|分《ぶん》笑《わら》つて、又《また》痘痕《あばた》の爺《ぢい》さんを熟々《つく/″\》と見《み》ては思《おも》ひ出《だ》して袂《たもと》で口《くち》を掩《おほ》うた。到頭《たうとう》極《きま》り惡相《わるさう》にして爺《ぢい》さんも去《さ》つて畢《しま》つた。
「此《こ》の箱《はこ》ん中《な
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