《だ》して行《や》るもんだ」
下駄《げた》を穿《は》いて立《た》つた氏子《うぢこ》の總代等《そうだいら》が乞食《こじき》を叱《しか》つたり當番《たうばん》に注意《ちうい》したりした。神官等《しんくわんら》が石《いし》の華表《とりゐ》を出《で》て行《い》つた後《のち》は暫《しばら》くして人《ひと》も散《ち》つて、華表《とりゐ》の傍《そば》には大《おほ》きな文字《もじ》を表《あら》はした白木綿《しろもめん》の幟旗《のぼりばた》が高《たか》く突《つ》つ立《た》つてばさ/\と鳴《な》つて居《ゐ》た。散亂《さんらん》した人々《ひと/″\》は其《そ》の癖《くせ》の其處《そこ》にぼつゝり此處《ここ》にぼつゝりと固《かた》まつて立《た》つてるのであつた。
暫《しばら》くして短《みじか》い日《ひ》が傾《かたむ》いた。社《やしろ》の森《もり》を包《つゝ》んで時雨《しぐれ》の雲《くも》が東《ひがし》の空《そら》一|杯《ぱい》に擴《ひろ》がつた。濃厚《のうこう》な鼠色《ねずみいろ》の雲《くも》は凄《すご》く人《ひと》に迫《せま》つて來《く》るやうで、然《しか》もくつきりと森《もり》を浮《う》かした。かつと横《よこ》に射《さ》し掛《かけ》る日《ひ》の光《ひかり》が其《そ》の凄《すご》い雲《くも》の色《いろ》を稍《やゝ》和《やはら》げて天鵞絨《びろうど》のやうな滑《なめら》かな感《かん》じを與《あた》へた。更《さら》にくすんだ赭《あか》い欅《けやき》の梢《こずゑ》にも微妙《びめう》な色彩《しきさい》を發揮《はつき》せしめて、殊《こと》に其《そ》の間《あひだ》に交《まじ》つた槭《もみぢ》の大樹《たいじゆ》は此《これ》も冴《さ》えない梢《こずゑ》に日《ひ》は全力《ぜんりよく》を傾注《けいちゆう》して驚《おどろ》くべき莊嚴《さうごん》で且《か》つ鮮麗《せんれい》な光《ひかり》を放射《はうしや》せしめた。時雨《しぐれ》の雲《くも》に映《えい》ずる槭《もみぢ》の梢《こずゑ》は確然《かくぜん》と浮《う》き上《あが》つて居《ゐ》ながら天鵞絨《びろうど》の地《ぢ》に深《ふか》く浸《し》み込《こ》んで居《ゐ》る樣《やう》にも見《み》えた。其《そ》の前《まへ》に空《そら》を支《さゝ》へて立《た》つた二|條《でう》の白《しろ》い柱《はしら》は幟旗《のぼりばた》であつた。幟旗《のぼりばた》は止《や》まずばた/\と
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