「幾《いく》ら嚊《かゝあ》の嫉妬《やきもち》燒《や》くもんでも、あゝえもなあねえな」
「あゝえのが何《なん》かの生《うま》れ變《かは》りつちんでも有《あ》んべな、可怖《おつかね》えやうだよ本當《ほんたう》にな」
「近頃《ちかごろ》それに何《なん》ぢやねえけえ、あら程《ほど》欲《ほ》しがつたのに後妻《あと》貰《もら》あべえたあ、云《ゆ》はねえんぢやねえけえ」孰《いづ》れの心《こゝろ》にも口《くち》にはいはなくて了解《れうかい》されて居《ゐ》る或《ある》物《もの》を少《すこ》しづつ現《あらは》さうとして有繋《さすが》に躊躇《ちうちよ》する樣《やう》にして噺合《はなしあ》うた。勘次等《かんじら》三|人《にん》が出《で》て垣根《かきね》の外《そと》へ行《い》つたと思《おも》ふ頃《ころ》、椀《わん》を拭《ふ》いて居《ゐ》た一人《ひとり》が慌《あわた》だしく立《た》つて外《そと》へ出《で》た。暫《しばら》くして歸《かへ》つて來《く》るといきなり
「どうしたものだおめえは、他人《ひと》の後《あと》なんぞ尾行《つ》けて行《い》つて、罪《つみ》だから見《み》ろよ」一人《ひとり》がいつた。
「さうぢやねえよ、有撃《まさか》おめえ、他人《ひと》のこと俺《おれ》だつて」分疏《いひわけ》した。
「そんぢや何《なん》に行《い》つたんだ」
「小便《せうべん》垂《た》つたく成《な》つたからよ」軈《やが》て抑《おさ》へ切《き》れぬ笑《わら》ひが顏《かほ》に浮《う》かんで
「そんだから過多《げえ》に飮《の》むなつちんだ、なんておつぎに怒《おこ》られ/\行《い》んけわ」といつた。
「そうれおめえ、罪《つみ》だよ」遠慮《ゑんりよ》もなく皆《みな》どつと笑《わら》つた。
夜《よ》は深《ふ》けて居《ゐ》た。きろ/\きろ/\と風船玉《ふうせんだま》を擦《こす》り合《あは》せる樣《やう》な蛙《かへる》の聲《こゑ》が錯雜《さくざつ》して聞《きこ》えて居《ゐ》た。
十五
霜《しも》が竊《ひそか》に地《ち》を掩《おほ》うた。
晩秋《ばんしう》の冴《さ》えた空氣《くうき》は地上《ちじやう》の凡《すべ》てを乾燥《かんさう》せしめる。思《おも》ひの儘《まゝ》に枝葉《えだは》を擴《ひろ》げた獨活《うど》の實《み》へ目白《めじろ》の聚《あつま》つて鳴《な》くのが愉快《ゆくわい》らしくもあれど、何《なん
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