をそつと動《うご》かしてぐつすり眠《ねむ》りこけた自分《じぶん》の子《こ》を見《み》た。
「どうしたえ、儘《まゝ》よ/\でもやんねえか勘次《かんじ》さん。まゝにならぬとお鉢《はち》を投《な》げりや其處《そこ》らあたりは飯《まゝ》だらけだあ、過多《げえ》に六《むづ》かしいこと云《い》ふなえ」兼《かね》博勞《ばくらう》は米《こめ》の飯《めし》を掻《か》つ込《こ》みながらいつた。腹《はら》を一|杯《ぱい》に膨《ふく》らませた一|座《ざ》は
「どうも御馳走樣《ごつゝおさま》でがした」と義理《ぎり》を述《の》べて土間《どま》の下駄《げた》をがら/\掻《か》き探《さぐ》つてがや/\騷《さわ》ぎながら歸《かへ》り掛《か》けた。
「おつう、よきこと起《おこ》せ」勘次《かんじ》はさういつて自分《じぶん》も一《ひと》つに蹣跚《よろ》けながら立《た》つた。おつぎは與吉《よきち》の身體《からだ》を劇《はげ》しく動《うご》かしたが熟睡《じゆくすゐ》して畢《しま》つたので容易《ようい》に目《め》を開《ひら》かなかつた。與吉《よきち》は草履《ざうり》を穿《は》くにもおつぎの心《こゝろ》を苛立《いらだ》たせた。
「おつう」と劇《はげ》しく喚《よ》ぶ勘次《かんじ》の聲《こゑ》が裏《うら》の垣根《かきね》の外《そと》から聞《きこ》えた。さうすると又《また》
「何《なに》してけつかんだ」と勘次《かんじ》は裏戸口《うらとぐち》から一|同《どう》を驚《おどろ》かして呶鳴《どな》つた。
「勘次《かんじ》さん與吉《よきち》こと起《おこ》してた處《とこ》なんだよ」内《うち》の女房《にようばう》は分疏《いひわけ》してやつた。
「汝《わ》りや何時《いつ》でもさうだ、ぐづ/\してやがつて」勘次《かんじ》は猶《なほ》も憤《いきどほ》つていつた。
「待《ま》つてれば善《え》えんだなおとつゝあ、洗《あら》ひまでも仕《し》ねえのにどうしたもんだ」酒席《しゆせき》の趾《あと》を見《み》ておつぎは呟《つぶや》いた。
「管《かま》あねえで歸《けえ》れよ、おとつゝあ酩酊《よつぱら》つてんだから」女房《にようばう》はおつぎの意《い》を汲《く》んでやつた。後《あと》では亂雜《らんざつ》に散《ち》らかした道具《だうぐ》の始末《しまつ》をしながら女房等《にようばうら》はいつた。
「勘次《かんじ》さんが心持《こゝろもち》も分《わか》んねえな」
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