《え》かく成《な》る樣《やう》ぢや其《その》肥料《こやし》は桑《くは》も吸《す》ふから、いや桑《くは》の根《ね》つ子《こ》の遠《とほ》くへ踏《ふ》ん出《だ》すんぢや魂消《たまげ》たもんだから、目《め》も有《あ》りもしねえのに肥料《こやし》の方《はう》へ眞直《まつすぐ》にずうつと來《く》つかんな」
「此《こ》れでどの位《くれえ》殖《ふ》えるものだと思《おも》つたら一ツ株《かぶ》で一|升《しよう》位《ぐれえ》づゝも起《おこ》せるよ」亭主《ていしゆ》がいへば
「うむ、さうかな、さうすつと割《わり》の善《え》えもんだな」各自《てんで》にさういつて居《ゐ》ると
「能《よ》く牛蒡《ごぼう》は保《も》たせたつけな」といふものがあつた。
「なあに、踏《ふ》ん固《がた》める處《ところ》へ活《い》けてせえ置《お》けば大丈夫《でえぢやうぶ》なものさ、俺《お》ら家《ぢ》や田植《たうゑ》迄《まで》は有《あ》るやうに庭《には》へ埋《う》めて置《お》くのよ」亭主《ていしゆ》は自分《じぶん》も椀《わん》の牛蒡《ごぼう》を挾《はさ》んでいつた。
「さうだが、俺《お》ら家《ぢ》なんぞぢや、それまでにや無《な》く成《な》つちまあから一|度《ど》でもさういに活《い》けて置《お》いたことあねえな」と一人《ひとり》がいへば
「俺《お》らなんざ、腹《はら》さ藏《しま》つて置《お》くから盜《と》られつこなしだ」兼《かね》博勞《ばくらう》は口《くち》を出《だ》した。
「牛蒡《ごばう》もうつかりして繩《なは》で縛《しば》つて活《い》けちや、其處《そこ》から腐《くさ》れがへえつて酷《ひで》えもんだな、藁《わら》は餘《よ》つ程《ぽど》嫌《きれ》えだと見《め》えんのさな」勘次《かんじ》は横合《よこあひ》からいつた。
「どうしたかよ」疑《うたが》ひの聲《こゑ》が發《はつ》せられた。
「どうしたかなもんぢやねえ、俺《お》ら家《ぢ》で行《や》つたこと有《あ》んだもの」彼《かれ》は相手《あひて》に壓《あつ》せられた樣《やう》に聲《こゑ》を低《ひく》めて
「なあおつう、さうだな」と身體《からだ》を横《よこ》に向《む》けていつた。板《いた》の間《ま》と土間《どま》との界《さかひ》に立《た》つて居《ゐ》る柱《はしら》の陰《かげ》にランプの光《ひかり》から身《み》を避《さ》けるやうにして一|座《ざ》の獻酬《けんしう》を見《み》て居《ゐ》た
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