これ》えばかし置《お》かねえで干《ほ》せな」と弱《よわ》い者《もの》の處《ところ》へ杯《さかづき》を聚《あつ》めて困《こま》るのを見《み》ようとさへする樣《やう》に成《な》つた。勘次《かんじ》は獨《ひと》り側《そば》なる徳利《とくり》を引《ひ》きつけて幾抔《いくはい》か傾《かたむ》けて他人《ひと》よりも先《さき》に小鬢《こびん》の筋《すぢ》が膨《ふく》れて居《ゐ》た。
「俺《お》ら、鉋《かんな》の持《も》たねえ大工《でえく》だ、鑿《のみ》一|方《ぽう》つちんだから」といつて勘次《かんじ》は相手《あひて》もないのに態《わざ》とらしい笑《わら》ひやうをして女房等《にようばうら》の居《ゐ》る方《はう》を見《み》た。彼《かれ》は俛《た》れ相《さう》に成《な》る首《くび》を起《おこ》して數々《しば/\》見《み》ることを反覆《くりかへ》した。おつぎは後《うしろ》の方《はう》へ隱《かく》れて居《ゐ》た。勘次《かんじ》は箸《はし》を一|本《ぽん》持《も》つて危險《あぶな》い物《もの》にでも觸《さは》るやうに平椀《ひらわん》の馬鈴薯《じやがたらいも》を其《その》先《さき》へ刺《さ》しては一|杯《ぱい》に口《くち》を開《あ》いて頬張《ほゝば》つた。平椀《ひらわん》には牛蒡《ごばう》と馬鈴薯《じやがたらいも》とが堆《うづたか》く盛《も》られて油揚《あぶらあげ》が一|枚《まい》載《の》せてある。
「箆棒《べらぼう》に大《え》かく成《な》つたつけな、此《こ》の馬鈴薯《じやがいも》はなあ」一人《ひとり》がいつた。
「此《こ》んでも桑《くは》の間《あひだ》さ作《つく》つたんだが、思《おも》ひの外《ほか》だつけのさ」亭主《ていしゆ》は自慢《じまん》らしくそれでも態《わざ》と聲《こゑ》を落《おと》していつた。
「桑《くは》の間《あひだ》でかう出來《でき》つかな、そりやさうと何處《どこ》さ作《つく》つたんでえまあ」
「裏《うら》の垣根外《くねそと》さ、土《つち》はかたで赤《あか》つぽうろくだが、掃溜《はきだめ》みつしら掘《ほ》つ込《こ》んで置《お》いた處《ところ》だから、其《そ》れが出《で》たと見《め》えんのさ、思《おも》ひの外《ほか》土地《とち》は嫌《きら》あねえもんだよ、此《こ》んなもんでも作《つく》つちや桑《くは》にや惡《わる》かんべが」
「大丈夫《だいぢやうぶ》だとも、馬鈴薯《じやがいも》が大
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