く暮《くら》し得《う》るのである。其《そ》れだから彼等《かれら》は婚姻《こんいん》の當日《たうじつ》にも仕事《しごと》の割合《わりあひ》にしては餘《あま》りに多人數《たにんず》に過《す》ぎるので、一《ひと》つ仕事《しごと》に集《あつま》つては屈託《くつたく》ない容子《ようす》をして饒舌《しやべ》るのであつた。
「どうえ嫁樣《よめさま》だんべな」
「善《え》え女《をんな》だんべえな」
「早《はや》く來《く》ればえゝな、俺《お》ら見《み》てえな」
彼等《かれら》はさういふことをすら口々《くち/″\》に反覆《くりかへ》しつゝ密々《ひそ/\》と耳語《さゝや》いた。
「白粉《おしろい》附《つ》けて來《く》んだな」一|番《ばん》年《とし》の少《すくな》い子《こ》がいつた。
「どうしたもんだえ、白粉《おしろい》附《つ》けんだんべかとまあ」年嵩《としかさ》が笑《わら》つた。
「水白粉《みづおしろい》持《も》つて來《く》んだか知《し》んねえぞ」
「只《たゞ》の水《みづ》見《み》てえな白粉《おしろい》も有《あ》んだつて云《ゆ》つけぞ」
彼等《かれら》はさういふ罪《つみ》のない穿鑿《せんさく》からそれから
「俺《お》らお給仕《きふじ》に出《で》なくつちや成《な》んねえか知《し》んねえが、耻《はづ》かしくつて厭《や》だな」
「嫁樣《よめさま》まつと耻《はづ》かしかつぺな」
「そんだが俺《お》ら嫁樣《よめさま》の衣物《きもの》どういんだか見《み》てえもんだな」半分《はんぶん》は望《のぞ》むやうな半分《はんぶん》は氣遺《きづか》ふやうな互《たがひ》の心《こゝろ》を語《かた》るのであつた。
夜《よ》に成《な》つて板《いた》の間《ま》の娘等《むすめら》が座敷《ざしき》の方《はう》へ引《ひ》かれた頃《ころ》勝手口《かつてぐち》に村落《むら》の若者《わかもの》が五六|人《にん》立《た》つた。彼等《かれら》は婚姻《こんいん》の夜《よ》には屹度《きつと》極《きま》つた例《ためし》の饂飩《うどん》を貰《もら》ひに來《き》たのである。晝《ひる》の間《あひだ》に用意《ようい》された饂飩《うどん》が彼等《かれら》に與《あた》へられた。彼等《かれら》の手《て》には饂飩《うどん》の大《おほ》きな笊《ざる》と二|升樽《しようだる》とそれから醤油《しやうゆ》の容器《いれもの》である麥酒罎《ビールびん》とが提《さ》げ
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