て居《ゐ》る。季節《きせつ》の變化《へんくわ》を反覆《くりかへ》しつゝ月日《つきひ》は容赦《ようしや》なく推移《すゐい》した。

         一二

 冬《ふゆ》は低《ひく》く地《ち》を偃《は》うて沈《しづ》んだ。舊暦《きうれき》の暮《くれ》が近《ちか》く成《な》つて婚姻《こんいん》の多《おほ》く行《おこな》はれる季節《きせつ》が來《き》た。町《まち》の建具師《たてぐし》の店先《みせさき》に据《す》ゑられた簟笥《たんす》や長持《ながもち》から疎末《そまつ》な金具《かなぐ》が光《ひか》るのを見《み》るやうに成《な》つた。おつぎが通《かよ》うた針《はり》の師匠《ししやう》の家《うち》でも嫁《よめ》が極《きま》つた。其《そ》の當日《たうじつ》に成《な》ると針子《はりこ》は孰《いづ》れも藏《しま》つて置《お》いた半纏《はんてん》へ赤《あか》い襷《たすき》を掛《か》けて、其處《そこ》らの掃除《さうぢ》やら、芋《いも》や大根《だいこん》を洗《あら》ふことやら朝《あさ》から大騷《おほさわ》ぎをして笑《わら》ひながら手傳《てつだひ》をした。おつぎも行《い》つて皆《みんな》と一|緒《しよ》に働《はたら》いた。おつぎは赤絲大名《あかいとだいみやう》の半纏《はんてん》で萌黄《もえぎ》の襷《たすき》を掛《か》けて居《ゐ》た。針子等《はりこら》は毎年《まいねん》春《はる》が漸《やうや》く暖《あたゝ》かく成《な》つて百姓《ひやくしやう》の仕事《しごと》が忙《いそが》しくなると又《また》の冬《ふゆ》まで暇《ひま》をとるとて一|日《にち》皆《みんな》で鍬《くは》を持《も》つて畑《はたけ》の仕事《しごと》の手傳《てつだひ》に行《ゆ》く。廣《ひろ》くもない畑《はたけ》へ残《のこ》らずが一|度《ど》に鍬《くは》を入《い》れるので各《おの/\》が互《たがひ》に邪魔《じやま》に成《な》りつゝ人數《にんず》の半《なかば》は始終《しじう》鍬《くは》の柄《え》を杖《つゑ》に突《つ》いては立《た》つて遠《とほ》くへ目《め》を配《くば》りつゝ笑《わら》ひさゞめく。彼等《かれら》の白《しろ》い手拭《てぬぐひ》が聚《あつま》つて遙《はるか》に人《ひと》の目《め》を惹《ひ》く外《ほか》師匠《ししやう》の家《うち》に格別《かくべつ》の利益《りえき》もなく彼等《かれら》自分等《じぶんら》のみが一|日《にち》を樂《たのし》
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