とこ》へも不義理《ふぎり》ばかりしてそんな處《ところ》ぢやねえつて云《ゆ》つて聞《き》かせても、みんな赤《あけ》えの締《し》めてるもんだから欲《ほ》しくつて仕《し》やうねえんでさ」
「さうだね、帶《おび》はまあ一|丈《ぢやう》つていふんだが、其處《そこ》らの子《こ》の締《し》めるのは什※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》ものだかさね」
「わしらおつうはそれ四|尺《しやく》もあればえゝつちんですがね、それだからわしお内儀《かみ》さんにでも聞《き》かねえぢや分《わか》んねえと思《おも》つて」
「さうさ成程《なるほど》、外《そと》へ出《で》る處《ところ》だけ有《あ》れば善《い》いんだから、それにや四|尺《しやく》もあつたら澤山《たくさん》だね、斯《か》うこつちばかり附《つ》ければね」内儀《かみ》さんは自分《じぶん》の帶《おび》へ手《て》を當《あ》てゝ見《み》ていつた。
「それお内儀《かみ》さん、兩方《りやうはう》へ附《つ》けんだつて恁《か》ういに縛《しば》つて中《なか》へたぐめた端《はじ》つ子《こ》が赤《あか》くなくつちや見《み》つともねえつてね、そんな處《ところ》どうでもよかんべと思《おも》ふんだが、尤《もつと》も其處《そこ》は一|尺《しやく》でえゝなんて云《いふ》んでさ」
「成程《なるほど》ね、私等《わたしら》今《いま》までさういふことにや氣《き》が附《つ》かなかつたが、結《むす》び目《め》も仕事《しごと》するんだから其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》に大《おほ》きくなくつたつて構《かま》はないし、四|尺《しやく》五|寸《すん》もあれば丸《まる》で新《あたら》しいやうに見《み》えるんだね」
「そんでお内儀《かみ》さん、どの位《くれえ》したもんでがせうね錢《ぜに》は、たんと出《で》んぢやはあ仕《し》やうねえが」勘次《かんじ》は危《あやぶ》むやうにいつた。
「幾《いく》らもしないね、其《そ》れ丈《だけ》ぢや」
「そんでも大凡《おほよそ》まあどの位《くれえ》したもんでがせうね」勘次《かんじ》は又《また》反覆《くりかへ》して促《うなが》した。
「唐縮緬《たうちりめん》も近頃《ちかごろ》ぢや廉《やす》くなつたから一|尺《しやく》十二三|錢位《せんぐらゐ》のものかね、上等《
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