土浦の川口
長塚節
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)俺《おれ》が
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一遍|宗道《そうだう》へ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例))代り/\に
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冬とはいふものゝまだ霜の下りるのも稀な十一月の十八日、土浦へついたのはその夕方であつた、狹苦しい間口でワカサギの串を裂いて居る爺はあるが、いつもの如く火を煽つてはワカサギを燒いて居るものは一人も見えないので物足らず淋しい川口を一廻りして、舟を泛べるのに便利のよさゝうな家をと思つて見掛けも見憎くゝない三階作りの宿屋へ腰を卸した、導かれて通つたのは三階ではなくて、風呂と便所との脇を行止まりの曲つた中二階のどん底である、なまめいた女が代り/\に出て來る、風呂から上つて窓に吹き込む風に吹かれつゝ居ると、ぢき目の先の青苔の生えた瓦屋根の上からまん丸な月が二三間上つた、案じたやうではなくいかにも冴々として障りになる雲も手を擴げない、命じておいた船
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