が足らずと

ませ垣の黄菊白菊ならぶ如ひなびたれども其妹を背を

     戯れに香取秀眞に寄す
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秀眞氏の消息たえたること久し、人はいふ其職業に忙殺せられつゝあるなりと、氏の工場は更紗干す庭を前にして水田のほとりにあり、乃ちあたりのさまなど思ひうかべて此歌を作る。
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更紗干す庭の螽はおのがじゝいもじ見むとてつどひ來らしき

へなつちのよごれ見まくと深田なる螽がともは蓋し來にけり

注連繩のすゝびし蔭にいそはくと煤びたらずやあたらいもじを

おろそかに庭にな立ちそ山茶花の花さへ否といひて萎まむ

芋の葉の妹もいなまむ二たびは日にはな燒けそさめけむものを

土芋もあらへば白し鑄物する人に戀ひむは浴みして後(明治四十年十月二十日)

     潮音に寄す

揖斐川の簗落つる水のとゞとして聞ゆる妻を其人は告らず

はし妻を覓《ま》ぎゝといはず云はずけど子を擧げたらば蓋し知らさむ

柿の木に掛けし梯子のけたの如いやつぎ/\に其子生まさん

こゝにして梯子のけたを子とはいふ其子の數に如かむ子もがも

竹竿に掛干す柿のつぶらかにいやつら/\に其子はあ
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