て秋行かむとす
さきみてる黄菊が花は雨ふりて濕れる土に映りよろしも
此頃は食稻《けしね》もうまし秋茄子の味もけやけし足らずしもなし
繩結ひて糸瓜を浸てし水際の落ち行く如く秋は行くめり
夜なべすと繩綯ふ人よ鍬掛の鍬の光はさやけかるかも
うつくしき籃の黄菊のへたとると夜なべしするを我もするかも
萼とればほけて亂るゝさ筵の黄菊が花はともしかゝげよ
障子張る紙つぎ居れば夕庭にいよ/\赤く葉※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]頭は燃ゆ
蕨橿堂に寄す
杉山のせまきはざまの晩稻《おく》刈ると夕をはやみ冷たかるらむ
稻曳くに馬も持てりといはなくに妹が押す時車にかひく
白菊は稻掛けたらば亂るべし橿の木蔭は稻な掛けそね
米櫃の底が出でぬと米舂くに白くもあらじ倦むらむ時は
橿の實のいくばく落ちて日暮れよと蒿雀《あをぢ》は鳴けど杵はのどかに
棕櫚の葉を裂きて吊るらむつり柿のゆりもゆるべき杵の響か
米搗くとかゞる其手に何よけむ杉の樹脂《やに》とり塗らばかよけん
冬の日の乏しき庭の綿さねは其所はかげりぬ此所とてや干す
己妻の縫ひし冬衣は着よけむにゆきが合はずとたけ
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