に、
滿ちわたる輕き空氣は、
左右縦に横に、
こまやかに振動しつゝ、
畑打の耳|※[#「てへん+櫪のつくり」、294−8]《くすぐ》りて、
響は止まず。
早春の歌
天の戸ゆ立ち來る春は蒼雲に光どよもし浮きたゞよへり
春立つと天の日渡るみむなみの國はろかなる空ゆ來らしも
蒼雲のそくへを見れば立ち渡る春はまどかにいや遙かなり
おのづから滿ち來る春は野に出でゝ我が此の立てる肩にもあるべし
おほどかに春はあれども搖り動く榛が花にも滿ち足らひたり
そこらくの冬を潛めて雪殘る山の高嶺は浮き遠ぞきぬ
いさゝかも春蒸す土のぬくもればゐさらひ輕み雲雀は立つらむ
麥の葉は天つひばりの聲響き一葉々々に搖りもて延ぶらし
おろそかにい行き到れる春なれや青める草は水の邊に多し
鷽の歌
うそどりの春がたけぬと鳴く聲に森の樫の木脱ぎすてにけり
うそどりよ汝が鳴く時ゆ我が好む枇杷のはつかに青むうれしも
[#改ページ]
明治四十一年
獨
一
とゝ/\と喚べば馳せ來て、
麥糠にふすまを交ぜし、
餌箱《ゑさばこ》に嘴を聚め、
忙しく鷄は啄む。
そを見つゝ庭に
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