て喚ぶ人を花賣われは女し思ほゆ

浄土寺の松の花さびさびたれど石切る村の白河われは

    雜詠

朝靄の多賀の城あとの丘の上の初穗のすゝき雨はれむとす(多賀城趾)
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 明治四十年


    蕨君病むと聞きて

睦岡の杉の茂山しげけれど冬にし病めば淋しくあるらし

冬の日の障子あかるくさゝむ時|蒿雀《あをじ》も來鳴けなぐさもるべし

君が庭の庭木に植ゑしよそゞめのいやいつくしき丹の頬はや見む

命あれば齢はながし網《あみ》繩の長き命をな憂ひ吾が背

    左千夫に寄す

蒼雲を天のほがらに戴きて大き歌よまば生ける驗《しるし》あり

大丈夫のおもひあがれる心ひらき※[#「鈞のつくり」、第3水準1−14−75]はす花は空も掩む

春の野にもえづる草を白銀の雨を降らして濕ほすは誰ぞ

大丈夫は眠れる隙にあらなくに凝り滯る心は持たず

春の光到らぬ闇に住みなばかくゞもる心蓋し持つべし

大空は高く遙けく限りなくおほろかにして人に知れずけり

    雲雀の歌

春の野に群るゝ神の子、
黄金の毛を束ねたる、
小さなる箒もて、
手に/\立ち掃きしかば、
緑しく麥の畑に、
黄金
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