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蟠る松の隙より見おろせば搖りよる波はなべて白泡
枝交はす松が眞下は白波の泡噛む巖に釣る短人
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十二日、日立村へ行く、田越しに助川の濱の老松が見える
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松越えて濱の烏の來てあさる青田の畦に萱草赤し
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十三日、朝來微雨、衣ひきかゝげて出づ、平潟より洞門をくゞれば直ちに關田の濱なり
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日は見えてそぼふる雨に霧る濱の草に折り行く月見草の花
雀等よ何を求むと鹽濱のしほ漉す※[#「鹿/(鹿+鹿)」、第3水準1−94−76]朶の棚に啼くらむ
松蔭の沙にさきつゞくみやこ草にほひさやけきほの明り雨
松蔭は熊手の趾もこぼれ葉も皆うすじめりみやこ草さく
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十四日、磯原の濱を行く
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青田行く水はながれて磯原の濱晝顔の磯に消入りぬ
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平潟の入江の松魚船が幾十艘となく泊つて居るので陸へのぼつた水夫共が代るがはる船に向つて怒鳴る、深更になつてもやまぬ
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からす等よ田螺のふたに懲りなくば蟹のはさみに嘴斷ちて
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