田上山はあやにうらぐはし

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弘文天皇山陵
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白妙のいさごもきよき山陵は花木犀のかをる瑞垣

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志賀宮の舊蹟を見て此の山陵を拜すれば一種の感慨なき能はず
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世の中は成れば成らねばかにかくに成らねば悲し此の大君ろ

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卅日、嵯峨に遊びて福田静處先生を訪ふ
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一むらは乏しき花の白萩に柿の梢の赤き此庵

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導かれて近傍の名所を探る、野々宮
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冷かに竹藪めぐる樫の木の木の間に青き秋の空かも

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小倉山時雨の亭に至る、くさ/″\の話のうちに茸狩りし趾の小き穴に栗の一つ宛落ちたるは烏のしわざなりなど語らるゝをきゝて
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繩吊りて茸山いまだはやければ烏のもてる栗もひりはず

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嵯峨より宇多野に到る
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小芒の淺山わたる秋風に梢吹きいたむ桐の木群か

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十月一日、栂尾
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栂尾
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