下旬具さに怠慢の罪を謝して近況を報ず、乃ち兒島の地圖を披きて作るところの短歌五首之をその末尾に附す、歌に曰く
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おほ地の形の刷り巻ひらきみれば吉備の兒島は見えの宜しも

なぐはしき苧環草のこぼれ葉ににるかもまこと吉備の兒島は

眞金吹く吉備の兒島は垂乳根の母が飼ふ兒のはひいでし如

燒鎌の利根のえじりと瀬戸の海と隔てもなくばしきかよはむに

茅渟の海や淡路のみゆる津の國へ行きける我や行くべかりしを

    時は來れり

ひた待ちし時今來たり眞鐵なす腕振ふべき時今來たり

大君の民にしあれば常絶えず小鍬とる身も軍しに行く

小夜業に繩は綯ひしを大君の御楯に立つか召しのまに/\

ますら男は軍に出づも太腿をいかし踏みしめ軍に出づも

おもちゝも妻も子供も大君の國にしあるを思ひおく勿れ

妻の子はおほに思ふな時に逢ひて大御軍に出づとふものを

隱さはぬますら健夫や大君の召しのたゞちに軍に出づも

うなし毛ゆ脚のうら毛も悉く逆立つ思ひ振ひて立たむ

いけるもの死ぬべくあるを大君の軍に死なば本懷《おもひ》足りなむ

しましくもいむかふ軍猶豫はゞ思へよ耻の及くものなきを
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